新マンション事情

大震災の二次災害防止拠点とは学校だけではない
都心にない老人ホームと都心に多い災害弱者

 東日本大震災で学校や公民館が震災の避難者でいっぱいになっている映像を見ると、建物の耐震補強工事の有無につい目が行ってしまう。避難先が余震に耐えられないようでは安心できない。さらに廃校を避難所とした場合も多く放映された。学校には広い校庭があるから仮設住宅用地が後で必要になることを思えば広すぎるくらいが良い。もう一つの避難所で気になるのは老人ホーム、ショートステイなどのケア施設である。老人ホームが被災した場合、老人を別の介護施設に収容しなければならない。さらに避難所で体調を崩した老人や在宅で介護されていた老人も入所避難する必要に迫られる。介護の専門家がボランティア活動をする際には自分が最も生かされる場所に応援に行く。自分が何をすればよいか判断できるから、応援を受けた施設職員の労務負担を軽減できる。応援仲間の行動調整や意思疎通も可能である。阪神淡路大震災の時は老人介護の専門家は老人ホームに行き、収容された老人の介護だけでなく、そこを拠点として避難所やテント暮らしや在宅の老人の生活支援、介護支援に出向いた。保健師は保健所に、NPO団体は同種のNPO団体を応援に行く。介護施設は防災拠点として存在感を高めたが、いかんせん市街地に施設は少なかった。ところがこの体験を東京は少しも生かしていない。東京都心区では少子化を受けて小中学校を次々閉鎖し取り壊しているから避難先は圧倒的に不足する。超高層住宅は人口密度が高いから避難所に行かずに何とか敷地内で頑張ってもらいたいが、建物の倒壊を避けられたとしても、ライフラインが切断したら居住し続けるのは中高層のマンション以上に不便だ。電気は数日以内で回復するにしても排水管が壊れては生活が成り立たない。今回、浦安市では高層マンションの敷地に仮設の共同トイレが設置されたが、さぞかし上階の人は難儀したであろう。ベランダに糞尿を一時保管するにしても扱いは大変だ。

 一般の避難所が不足するだけでなく老人ホームへの避難となれば23区は全くお手上げである。古い施設の耐震補強も遅れている。23区内には有料老人ホームがあっても介護施設が極めて少ない。東京では奥多摩町や日出町、八王子市、青梅市に集中している。隣接3県も市街地を避けて市街化調整区域に集中立地している。普段でも遠隔地入所が当たり前である。これでは介護専門のボランティアは在宅介護、避難所介護が困難な人に対応できない。多摩地域から23区に通勤介護する訳に行かない。85歳以上高齢単身者世帯比率は多摩地域より23区に、とりわけ都心区に集中している。近年では生涯未婚女性が分譲マンションを多数購入しているから、将来は子供なし親族なしの天涯孤独の超高齢単身者の占める割合が多くなる。災害弱者が都心に集中するのに行政は何も手を打たないどころか老人ホームの建設抑制さえしている。阪神淡路大震災の時には避難場所の争奪戦に敗れた災害弱者が便所や入り口のそばで寝ていただけでなく、多数弾き飛ばされて公園の中でテント暮らしをしていた。東京に大地震がきたら、地震で助かってもその後が大変である。(つづく)

(2011年5月号掲載)
(高崎健康福祉大学教授 松本 恭治)