新マンション事情

東北の震災から浮かび上がるマンションの存続条件
被災がなくても正常に生き残れないマンション群

 社団法人高層住宅管理業協会の会員が東北6県で受託している1612棟のうち81・2%になんらかの被害が生じているが、全体として軽微または損傷なしが82・44%に及んだと言うことはほっとしたニュースであろう。とは言え大規模な補強・補修が必要な「中破」が26棟1・6%、タイル剥離やひび割れの補修が必要な「小破」は283棟で17・2%、外見の損傷が殆どない「軽微」が1024棟62・4%、被害なしが309棟16・8%、津波による1階部分の被害は12棟、地振動による不同沈下や埋設物の損傷は81棟である(東日本激災復興新聞2011年6月24日)。自主管理または会員以外の管理物件の状況は不明だが、被害の程度は多分大きく変わらない。東北は東京や関西の大都市圏に比べて新耐震基準で建てられた建物が多い ̄ことも被害を少なくした原因と考えられるが、それでも太平洋岸の市町村に多く建っていたらと考えるとぞっとする。もし震災が直撃したら各管理組合の再建能力、再建を可能にする社会環境があるかは疑わしい。市街地の人口密度を示す尺度としてDIDs人口密度があるが、それによると神戸市に比べ仙台市の人口密度は極めて低く、地価も格段に低い。このような都市では良好な戸建て住宅地が形成される反面、マンションの値下がりが実に速い。

 図は全国不動産情報・賃貸住宅情報検索サイトから抜き出したデータを基に仙台市宮城野区に限定して竣工年別のマンション単価分布を示したが、価格単価は滑り台のごとく急速に経年低下する。採取データは広告価格だから、実際の契約価格はそれを若干下回る可能性が高いが、滑り台状態は変わらない。12年程度で単価は半減するが、この速度は東京都の3倍弱で、車社会の群馬県と同程度のスピードである。群馬県で筆者が調査した結果では低価格化するほど住宅所有者の滞納が増え、競売発生頻度も高まる。適正管理を進める上で障害になりやすく、修繕放棄の管理組合が多かった。仙台市が群馬県と異なるのは委託管理方式が多くいずれもそこそこの修繕費を徴収していることである。一見良いことのように見えるが、修繕費と無関係に価格低下が進むのだから、事態はむしろ群馬県より深刻だ。古いマンションの魅力が低下しつつあるのは致し方ないが、新築物件の1/10の価格に下がるようでは社会的不要住宅になったも同然だ。一体どんな理由がそこに潜んでいるのだろうか。価格分布から見ると耐震基準の変更はさしたる影響はなさそうだ。大量消費社会は使い捨て文化を生み出したが、住宅まで対象となれば次は都市が使い捨てにされる恐れが増す。産業界は労働者を使い捨てにしているのだからとやや八つ当たり気分にもなる。ところで、とことん値下がりしたマンションが地震災害で大破した場合、住民は多額の負担をしてまで再建する力は乏しい。今回、解散決議したマンションから、たまたま1件中古広告を見つけたが、3DKで180万円であった。幸運にも難を逃れたマンションの今後の行方が気になるが、使い捨てを生む本当の原因を私は日本の都市・住宅政策にあると考えている。集合住宅を都市の核として位置づける政策がない。あるのはデベロッパーに都合が良い開発自由だけである。(つづく)

(2011年7月号掲載)
(高崎健康福祉大学教授 松本 恭治)