新マンション事情

自動車を取るか持続可能な住環境を取るか
自動車を選択すればマンション寿命は短い

 図は1000人当たり自家用車の保有台数の2005〜2010年都道府県別変化である。マイカー離れがマスコミから指摘されて久しいが、明らかに離れているのは東京、大阪、京都、神奈川の4地域だけである。大半の県は増加中である。但し、群馬県や富山県のように550台以上の高い保有状況に達している県は増加の勢いが弱まり、450〜550台程度の中間値を示す県で増加率が高い。前者は飽和状態に近づきつつあるに比べて、後者はそのあとを急追している。
 昨年の3月11日の津波被害の映像を見て、地方が車社会に突き進んでいるのを実感したが、復興に際しては是非アンチ車社会を実現して欲しい。自動車の所有者が増えるほど、所有しない者の生活環境が悪化する。間違いなく公共バスや鉄道の廃止路線が増えるし、廃止にならなくても乗客減から、運行本数は減る。市町村の中心街に居住しても買い物は郊外の大型スーパーに行かなければならないし、公民館や病院など公共施設も車が無ければ利用しにくくなる。車社会の弊害はマンションではより強く現れる。近年の地方都市の分譲マンションは平置きでは駐車場不足に陥り易く、売れにくい。そこで機械式立体駐車場で住戸数を超える台数の駐車場を計画する場合が多い。会議室等を削って1戸に2台計画する場合すらある。ところが売れてしまえばよいのだから駐車料金を格安に設定し、しばしばただも現れる。修繕積立金も数千円程度の格安で、管理費だけは高額設定だ。販売促進と後の管理受託で儲けようとするデベロッパーの魂胆がありありと見える。玄関ホールを大きくしシャンデリアとソファーで豪華に見せる。一見立派なマンションに住宅研究者すら、最近のマンションは質が良くなったと言う。私の判断は違う。最近のデベロッパーは性質が悪くなったのである。地方都市に出没する2流、3流のデベロッパーが開発するマンションには特に注意が必要だ。会議室が無い場合は理事会を玄関ホールに椅子机を持ちこんでするしかない。立って済ます場合もあるが、そうしなくてもいいように管理会社が全てやりますと言った具合だ。機械式駐車場は5年も経てば故障が頻発し、利用者は不便する。15年も経過すれば更新工事が必要となり易いが、駐車料金タダでは更新不可能である。見かけに騙されて購入した人たちは後の祭りである。不当販売と裁判に訴えたところで、まず勝ち目はない。購入者は見て買ったはずだ。駐車料金、修繕費徴収額が少なすぎるのは売った側の陰謀だと気づいたら、自分たちで値上げすれば済むことである。ところが地方の購入者は腰かけ意識が高いから、更新する前、大規模修繕を実施する前、値上げする前に転居しようと思っている人が大半である。現実は中古の値下がりが速いから、売るに売れず住み続ける人が多い。群馬県では多くの仲介業者はマンション住民を2級市民と評す。もとはと言えば、悪徳デべロパーの儲け主義とそれを放置する行政、自動車社会を選択した市民に責任が有りそうだ。
 成人の数だけ車が必要な社会は誰がみても馬鹿社会だ。手軽に仲間と飲み屋に行けなかった群馬県の記憶がいまなお私の最大の恨みだ。1流のデベロッパーは群馬県には来ない。これって八つ当たり?(つづく)



(2012年5月号掲載)
(高崎健康福祉大学教授 松本 恭治)