新マンション事情

高齢単身者の過大住宅の問題
資源の活用と地域社会安定の仕組み

 図は持ち家戸建て、持ち家共同住宅、借家の世帯主の年齢分布である。住宅種類別の合計と単身世帯に分けているが、持ち家戸建て住宅は高齢者が多く、借家世帯は若年単身者が多い。持ち家共同住宅世帯はその中間的傾向を示す。単身世帯の場合は持ち家戸建て住宅では60歳以上が大半で、75歳以上でも4割に達する。但しこれは日本の平均で、最も多い鹿児島県で5割、最も少ない埼玉県で3割である。高齢者の一人暮らしは孤独死や住宅の荒廃や死後の空き家問題に直結しやすい。高度成長期には、多くの分譲マンション購入者は、ローンの支払いを終えないうちに買い替えする機会が多かったが、昨今では、一旦取得すると多くの場合やっとローンの支払いを終えた時には、資産価値が目減りしているから、住み替え、買い替えは簡単でない。さらに少子高齢化と親子別居の流れが強まっているから、同居のための買い替えも必要性が減じている。分譲マンションも必然的にゴール化するから、古いマンションでは高齢単身者の増加を避けられない。
 新規分譲マンションの平均規模が80m2程度だが、全国どこでも同程度で、これで一人暮らしなら、ややぜいたくに過ぎないが、半分はそれ以上の規模の住宅になる。戸建て住宅となると地方の住宅はやたら広い。特に富山県における持ち家の平均規模は179m2である。東京都の92m2の約2倍である。一般的に東北、北陸に比べて大都市圏と気候温暖な地域は戸建て住宅の面積が小さい。
 ところで、単身時に持ち家の戸建て住宅を購入する人は極めて少ない。分譲マンションは中年の単身者が住宅を購入する場合が増えたが、都心または最寄駅に集中する。大半の持ち家単身者は子供の世帯分離や配偶者の死亡による場合がほとんどだから、床面積は大きいままである。過大な住宅で高齢者が単身で暮らすのはもはや苦痛に違いない。特に雪国では戸建て住宅の雪下ろしは命がけになるし、分譲マンションでも年金暮らしには修繕費が重くなる。高齢単身者の過大住宅は先進国共通の課題である、近年英、仏、独、北欧諸国では、高齢単身者が大きな住宅を活用して若者に安く住まわせる方法が流行している。防犯や防災、高齢者の危機管理に役立つし、住まいの手入れに必要なお金も得やすい。他人との同居するシェアハウスも多い。空き家対策も熱心である。フランスでは空き家にすると税金が上がる。年単位で税金が上がるから、持ち主は売却するか安く賃貸するしかない。英国では行政が住宅を管理し、借り手を探し、家賃を持ち主に渡す。住宅監視制度が有るから不良住宅には改善命令も出せるし、改善不能な場合は閉鎖命令も出せる。1988年に初めて訪英した際に住宅監視員に案内されて不良住宅と改善住宅、閉鎖住宅を見ることが出来た。さて農村住宅となると果たして需要があるかと疑問になるが、都市住宅は集合住宅が大半だから、退職後に農村に住むのはあこがれである。但し、外観を変えるには厳しい審査があり、新築はさら難しい。人口減少社会・高齢社会ではこれまでの新築一辺倒の住まい方意識や制度を変えないと地域社会も個人も守れないと思うのだが。(つづく)



(2012年6月号掲載)
(高崎健康福祉大学教授 松本 恭治)