新マンション事情

都市の崩壊はなぜ起きたか
ハイセンスな空き店舗街

 図は群馬県の都市計画用途地区別住宅空き家率の経年変化である。平成20年の中心商業地の空き家率が全国都道府県中1位である。昭和63年までは中心商業地の空き家率は近隣商業地、工業区域、住宅地とさほど差はなかったものの、平成5年頃から抜きんでて空き家化が進行した。もちろん正確なデーターはないが店舗、事務所等の閉鎖が並行して生じている。
 原因はマイカー社会化と市街地の郊外膨張政策にあった。自動車保有率が高まり、乗合バスの輸送人員は激減した。昭和50年の輸送人員を100とすると、最近は10程度となっている。昭和35年当時を100とすると5まで減っているようだ。 つまり公共交通は壊滅状態だから県民はどこに出かけるにも自家用車が必要になった。群馬県は成人一人に一台必要と言われ、1000人当たり保有台数は日本一である。車が増えると郊外に大駐車場付きの大型店が増え、最寄駅と脈絡がない水田や田畑、山林に工場団地も出来た。駐車場付きの住宅も郊外に多く建てられた。自動車保有率との関係は相互に原因でもあり結果ともなって進行した。 
 もとより中心市街地にある住宅は密集していたから新たに駐車場を設置する空間的余裕はなかった。駐車場がない店舗には当然客が来ないから、働き盛りの店主は競って郊外に店と住宅を移動させたのである。診療所・病院・保育所もしかりである。
 不便さを覚悟しなければ中心市街地に住むことが出来なくなった。古い分譲マンションは総じて駐車場設置率が低い。いくら駅前にあっても車なしでは生活できないから買い手、借り手はいなくなった。つまり、駅前マンションの空き家化が進行したのである。マンションの足元の店舗も半数近くは閉鎖のままだから、管理費・修繕積立金の滞納はあって当たり前である。
 近年では店舗なし、機械式駐車場設置で戸当たり2台駐車可能、駐車料金徴収なしのマンションが計画販売されることが増えたが、これではマンションのスラム化は必至である。なぜなら17〜8年経過した機械式駐車場が金食い虫となり、使えなくなった場合が増えて来たからである。機械式駐車場を撤去する必要に迫られた事例が増えつつあるが、撤去するにも金がかかる。さびた機械式駐車場を放置するマンションも現れた。この場合マンションの中古価格は値崩れする。中心街に大量の新規マンションが建設されても空き家が増えているのが、群馬県の現状だ。
 ところで、非木造共同住宅の空き家化と同時並行しているのは店舗・事業所等の空き家化である。中心商業地にある店舗等の空き家化は都市の顔だから、住宅の空き家以上に目立つが、同じ群馬県内でも市ごとに表情が違う。
 いかにもうらぶれた雰囲気の中心街が多い中で、高崎市の中心街はハイセンスの空き店舗が目立つ。理由は高崎市で空き店舗を活用して店開きをする際に店舗の改修費用が行政から助成され、さらに3年間家賃の半額が補助されていたためである。ただし多くは3年を経ずして撤退する。綺麗な店構えでも、空き店舗群と、空き家が多い高層住宅群では人が逃げ出しても不思議でない。
 ここに至ると県内空洞化都市めぐりも観光になる。都市計画行政職員なら必見の研修コースだ。(つづく)



(2012年8月号掲載)
(高崎健康福祉大学教授 松本 恭治)