新マンション事情

バブルの置き土産となった某マンションのその後
使用価値と中古価格の違い

 バブルの置き土産とは、1990年頃の首都圏の開発最前線に建てられ、以降前線が後退した後に残されたマンションと定義する。群馬、栃木、茨城県の市街化調整区域にも分譲マンションが多数建設された後、ブームが去ったが、残されたマンションもバブルの置き土産である。ここでは、首都圏に限定するが、置き去りにされたマンションリストが有る訳でないから、明細地図と不動産広告を頼りに現地に出向き、不動産屋に聞き込んで運が良ければ他の物件も見つけられると言う方法を取った。
 訪問したマンションは東京都と埼玉県の町村に限定すれば10近くになるが、総じて空き家が多く、20年近く経ても大規模修繕を実施したことが無いマンションが半数近くあった。バブルに便乗して遠隔地に建てたから、分譲中、又は直後に開発業者が倒産したのは、少なくとも4物件を数えた。
 この中のひとつAマンション見学記を報告する。インターネットに掲載されていた中古広告では480万円、3DK、92年7月竣工、59・46m、管理費月5000円、修繕積立金月5000円、5階建、エレベーター付き、自主管理、最寄り駅から徒歩8分である。町内唯一のマンションで、隣接の市に行けばマンションは多数ある。
 たまたま現地で70歳男性の副理事長の自宅で話を聞けた。本人は趣味の拠点として4年前に中古を購入。近くの畑を借りてオートバイで手入れに行く。冬は寒いので春から秋までときどき使用する程度とのこと。近所の農家の人が野菜の育て方を教えてくれるから楽しいとのこと。
 現理事長も中古購入者で別荘代わりに使用している。29戸中、1年に1回以上使用する住宅は14戸で借家使用が内5戸である。持ち家9戸の中に時々使用の2人が入ると言うのだから、常時いるのはさらに減る。坂の途中の岩盤の上に建っているから、地震には強いとのこと。
 改めて建物を点検すると、多少の汚れはあるものの、ひび割れ、コンクリートの膨らみ、タイルの剥がれが全くない。竣工以来大規模修繕をしたことがなく、修繕積立金は貯まる一方らしい。理事長、副理事長とも当分大規模修繕する必要を感じていないから、計画はもちろん無い。地震の大きな揺れが無いことが、建物にとっていかに有り難いか、私は群馬県でたびたび感じていた。
 ところでマンションの僅かな空き地を住民の一人が畑として勝手に使っていたが、草茫々になるよりましと何のお咎めもない。さらに隣の農家が50坪の畑をただで貸すそうだが、男性が言うには素人には広すぎるらしい。ほかにもただの畑があるそうだ。「これで温泉があったら最高ですね」と言ったら、町に2カ所あった。渓流釣りはし放題。理事長は軽井沢の別荘に飽きて、ここに乗り換えたらしい。別宅は使用価値が大事でそれは自分で決めること。中古価格は他人が決めることらしい。後継者のいない農家は近郊でも多い。
 多摩地域でも借家経営、駐車場経営に赤ランプがつきつつある状況だ。そこで、30m2で苗・肥料提供、害虫対策と農業指導込みで年間4万円程度の低料金の農園が増えた。農業指導無しの場合は年間2万円程度が多い。ただし、山中の置き土産マンションはただの畑に農業指導がつく。
 さて皆さんこの場所分りますか。(つづく)



(2012年9月号掲載)
(高崎健康福祉大学教授 松本 恭治)