新マンション事情

住要求の変化に対応する手段と時代背景
選択肢の有無が自分と団地の未来を変える

 住宅余りが懸念される中でも個々の住宅の問題は残る。人口が減少すれば住宅ストックの価格は低下するから、小規模住宅から大規模住宅への移動は経済的に容易になるが、それでも狭小住宅に悩む世帯が姿を消す訳ではない。
 問題の構造、解決策の選択は時代の経済や住宅事情を反映する。高度成長期は分譲住宅を購入した後、僅かな期間で買い替えし、戸建て住宅に移転した人が多かったが、1980年代に入ると郊外開発も遠隔化し、売却益を得ながら新築住宅を取得するのが簡単でなくなった。
 入居して15年程度の場合、住宅の狭さを最も強く感じる一方、まだ定年退職に至る者は少なく、共同増築を合意する環境は整っていた。大阪の下野池団地で83年〜86年までに410戸の共同増築が完成してから、関東の団地でも増築運動が盛んになり、高洲2丁目団地など、複数の団地で増築が実現した。合意の背景には地価がウナギ登りで、650万円の増築費用をかければ中古価格は1300万円近くアップした事情があった。ところが地価が高騰すると、無負担で出来る建て替えに多くの関心が集中した。一新すれば床面積拡大だけでなく、エレベーター設置と設備周りの機能アップが出来る。共同増築よりも資産価値が上がる可能性が高い。
 ところがバブルがはじけて地価が低下すると、無負担から一部負担に建て替え条件が変化した。運動を閉じる組合が続出する一方、残った建て替え運動は次第に長期戦に突入した。立地条件にもよるが、多様な規模の住宅が混合している団地では共同増築も建て替えも合意が得られなかった。運動が長期化している間に家族人数が減少したこと、世帯主の高齢化で費用負担が重くなった事などが主な理由である。
 さて、別宅使用は高度経済成長期には3DKの単一住宅型の団地では大いに流行ったが、多様な住宅型が混在した団地では、小学校高学年から中学高学年の子供が居る多くの世帯が団地内住み替えを選択した。単一型では複数の住宅を使用するか、団地外転出して居住条件を改善するしか方法はない。複数使用は魅力的だが、住居関係費用が2倍になる。バブル期は資産形成を兼ねたが、最近の中古価格の低下とリストラの不安増大は購入意欲を削ぐ。家族が減った世帯では別宅を売却か転貸する場合が増えた。共同増築も今は流行らない。中古価格が低下したから、増築費用で別宅を丸ごと買える場合が多い。増築しても投資以上には中古価格は上がらないのも理由だ。2戸の隣合わせはまれに可能だが別宅取得より機会は少ない。
 さて、3LDKでも近年は高齢者の単身化が激しい。ハウスシェアは少しずつ出現しているが、他人との同居を嫌う持ち家高齢者より、若い単身者同士が借家で住むなら可能性もあろう。減築は区分所有形態では論外である。受益者負担としたくても受益者を特定出来ない。全体が賃貸住宅なら経営者が家賃配分すれば良い。共同建て替えは今後一層困難になる。小規模建て替えなら集団移転が可能で、実例もある。住宅地は過度に定住すれば老人の町になる。適度な交代が好ましい。さて、地価や経済事情に翻弄される増築・建て替えと個人の選択、皆さまはどちらを優先しますか。(つづく)



(2012年10月号掲載)
(高崎健康福祉大学教授 松本 恭治)