新マンション事情

空き家対策はなぜ進まない
マンション放棄が蔓延する前に対策を急げ

 東北の大震災では空家住宅ストックが多かったことが大いに役立った。被災者が民営借家を借りた場合、行政はその住宅をみなし仮設住宅として家賃補助の対象としたから、体育館、公民館等に一時避難していた人々が次々民営借家に移った。 仮設住宅より既存の空き家住宅を活用した方が迅速で、かつ仮設住宅より費用がかからないなどの利点が大きい。緊急の時だから提供借家も多様で学生用の単身用から床面積50坪程度の大規模住宅まであった。
 近い将来、東京で今回と同様の規模の大震災が生じたら、空き借家は絶対的に不足するから、都民は北海道から沖縄まで全国の空き家を求めて右往左往するしかない。場合によっては外国への脱出も奨励しなくてはならない。とは言え大震災を予定して空き家増加を放置する訳にも行かない。
 空き家の適正量は一般的に5〜6%と言われているが、現在時点は13%だから平常時ではやや過剰である。今後10年毎に日本の人口は1000万人ずつ減少するが、懸念されるのは空き家の大量増加である。既に地方では空き家、空きビルが蓄積し、対策の必要性が課題となっている。各地のNPO団体が空き家活用で興味深い取り組みをしているものの、空き家増加の勢いを止めるほどの効果はない。
 ところで空き家問題は古くからあるが、意外と研究調査は少ない。空き家数は分っても、空き家発生の原因、空き家所有者の属性(居住地、年齢、家族構成、収入等)、今後の利用計画など不明だらけである。賃貸アパートなら経営者を探すのはさほど苦労しないが、分譲マンションの持ち主は広域に分散する上、持ち主の名前、住所は個人情報だから、第三者が調査するには障害が多い。空き家の地域社会への影響や住宅種類別、建て方別の空き家の発生率の違いなど研究課題が多い。分譲マンションに限定した場合、発生率、発生原因そのものが分からないのだから、対策の議論もしにくい。もとより行政は空き家について民事不介入を原則としており、もっぱら税金を徴収するだけである。
 空き家は先進国でも大きな問題である。日本と異なるのは行政がしっかり介入する点だ。イギリスでは住居法の基に住宅監視制度があり、不良住宅には改善勧告や閉鎖命令を発することが出来るが、さらに空き家を放置する場合は短期借家制度で、行政が権限を行使し借り手を募集し、家賃を所有権者に渡す仕組みがある。フランスのように2年以上の空き家に空き家税をかけ、1年ごとに税率を上げる。すると持ち主は借家人を見つけるか、売却するか、権利を放棄するかを迫られることになる(獨協大学法学部 小柳春一郎教授、フランスの空き家対策と保安上危険建築物対策 月刊住宅着工統計/2012・3参照)危険・不衛生建築物の除却と補助に関しては両国とも100年以上の歴史があるのだ。
 図は都道府県別のマイカー保有台数別建て方別空家率である。戸建住宅は滅失・建て替えが容易だから、保有台数に関わらず空き家が蓄積しにくいが、一方非木造共同住宅はマイカー社会の県ほど空き家が蓄積しやすい。今後人口減少が大きい県ほど非木造共同住宅の空き家率増加が予測される。マンションのスラム化が社会問題となる時期は近い。(つづく)



(2012年11月号掲載)
(高崎健康福祉大学教授 松本 恭治)