新マンション事情

「売らない・貸さない」と「売れない・貸せない」空き家の増加
都市像がない都市に市民は何を期待すべきか

 平成20年の住宅土地統計調査結果では非木造共同住宅の空き家率は東京の中央区29%、千代田区28%で特別区の平均11・8%より格段に高い。東京都心から60〜70km帯では30%と高い。地方都市では30%を超える場合が珍しくない。
 持ち家共同住宅居住者の単身率は東京都心区と東北、北陸、中部等の地方都市で高いから、推定に過ぎないが、分譲マンションの空き家率は非木造共同住宅の空き家率とほぼ同じ傾向を示すと考えても良さそうだ。
 群馬県の全マンションについての筆者の調査では、半分以上空き家化した事例は平成24年現在14事例あった。管理組合の崩壊のほか名ばかりの管理組合が多い。管理組合が強力な指導力を発揮している事例でも、空き家化・単身化・匿名化が進行する。理由は、「売れない・貸せない」住宅が多い事による。中古価格は低下し、競売が多発し、それでも落札不調が多いから、空き家が蓄積する。人口減少に加えてストック対策なしで、過酷な新規開発競争を行えばフィルタレーションは加速する。
 一方中古価格も家賃も高い東京都心での空き家蓄積の原因は不確かである。使用不能、老朽化、低水準化、環境悪化、投資、地上げ等、原因が何かを特定するには事例毎に確認するしかない。
 そこで、都心の最寄り駅から5分以内の距離の高級感がある11F、30戸、駐車場なし、2000年築のNマンションを訪ねた。1LDKと2LDK(55m2)が半々で、2LDKの借家家賃は18万5千円以上、中古価格の相場は3500万円である。郵便ボックスには5つの事業所名しかない。住民の大半が匿名だ。
 居住者のY氏によれば持家居住は5戸、借家15戸、空き家10戸で不在家主が25戸に達する。当初入居者は現在極めて少ない。役員は1年交代の理事長を含めて3人。総会出席は4〜5人程度である。管理規約では役員を持家居住者に限定しているから、機能不全だ。単身化も手伝って住民の交流はなく、管理会社任せだが、ご多分に漏れず修繕積立金は低いままだ。
 現在南側に21階建て大学病院を建築中で、完成すれば日陰に入る。隣接地域の多数のビルを大学が地上げ中だ。住宅の持主は「売らない」で対抗中だが、駆け引きか本音か所有者同士で読めない。既に大学の関係者が地上げ住戸に入居している。
 東京都心区は市街地再開発事業が盛んだから、地価の上昇が顕著で、不動産を放っておいても資産の目減りが少ない。持ち主は居住より高値売り抜けが目的化し、「貸さない」理由となる。地域の将来は「金の力」が決定する。
 これだけでは中央区、千代田区の非木造共同住宅の高い空き家率を説明できないが、空き家化の理由の一端を成す。集合住宅の各住戸が個人財産であっても、空き家化すれば、積み木崩しに似て他の住宅の安定を一気に脅かす。共同管理や防災意識向上を訴えても無駄だ。そこで「売らない・貸さない」長期空き家にはフランスのように課税加算すれば良い。「売れない・貸せない」空き家はいずれ行政による強制収用に委ねざるを得ないが、課税も強制収用もあるべき都市像と地域の合意があっての話だ。
 私有財産の保全と改変には公共の論理が必要だが、都市像のない都市はどこに行着くのであろうか。(つづく)


(2013年2月号掲載)
(高崎健康福祉大学教授 松本 恭治)