新マンション事情

65.地方のマンションブームを誰がつくる/ローリターン・ハイリスクの現場だから、失敗した業者は2度来ない

 図は東北5県、北関東3県、北陸4県の分譲マンション着工件数の経年変化である。北関東では2004年に上昇し始め、2006年をピークに以降急速に件数が激減するが、北陸5県ではやや遅れて着工件数が上昇し、北関東と同じ2006年をピークに以降減少する。東北5県の場合はマンションブームが生じないまま下降現象が見られた。マンション供給の低下は姉歯事件(2005年末)に伴う建築確認制度変更とリーマンショック(2008年9月)の影響が大きいが、2009年以降の回復傾向はいずれの地域も遅い。
 なお、東京都の場合は北関東より早い2003年に着工がピークに達した。以降低下するがこれは地価の上昇が東京都での着工件数を減じた結果と見て良い。隣接3県の着工ピークは2006年で、この年まで東京都に代わる開発地と化していた。2009年以降の回復傾向は東京都が早く、2012年には1999年〜2001年時点の着工件数に迫っている。
 ところで、北関東のマンションブーム、北陸のミニブームが生じた背景は、大都市圏で繰り広げられたマンション開発競争の一部が地方県に滲み出て来た姿と見る事が出来る。バブル期と同じ姿である。地方の需要でなく開発業者の都合の側面が強い。一旦会社を大きくしたらどこかで事業展開しなければならない。小資本の業者ほど開発地を地方都市に求めやすい。その結果が北関東、北陸の着工件数増加である。 
 このようなブームには問題点が多い。それらは(1)開発先の住宅・都市事情について疎い、(2)いわゆる出張開発だから赤字事業となればすぐ撤退する、(3)但し建設後の管理は自社の子会社が引き受け、遠隔管理になりやすい、(4)地方都市のブームは遅く到来して、終結は早い。土地取得から竣工まで時間がかかるから、販売段階で買い手が居なくなる危険性が高い。先行業者が在庫処理に苦しんでいる時期に後続業者の物件が次々竣工するから、投げ売り、代行販売、不良販売、下取り販売、倒産が続出。販売促進のためには機械式駐車料金を無料又は超低額とし、修繕積立金を低く設定するのが普通になる、(5)新興不動産・小資本の業者が多いから、集会所をなくして販売面積割合を大きくする傾向がある。
 さて、このような経過をたどった分譲マンションも地方都市の住宅ストックの中では超少数派である。ただし、特定都市の商業地域に集中するから都市景観を大きく変える。地域の平均的住宅面積に比べて相対的に小規模住宅になるから販売時から単身者の購入比率が異常に高くなる。中古価格の速い低下、車社会で平常時の低いマンション需要、形骸化している都市計画、不安定な地域社会、相談できる専門家・機関の少なさ、分譲マンションに関心がない行政、分譲時の混乱の後遺症に加えて中古流通環境の悪さなどから、管理不全マンションに陥る場合が少なくない。中心市街地にマンションブームが到来した時、市街地の空洞化を阻止するかと期待したが、結果は既存のマンションの空き家を増やしただけである。さらに空洞化の勢いは止まらないから、新築マンションが近い将来不良資産化する恐れが強い。積み上げられる不良資産に対して、皆さんが市長ならどうする?(つづく)


(2013年5月号掲載)
(高崎健康福祉大学教授 松本 恭治)