新マンション事情

70.超高層住宅の落日/新築超高層の大量建設が既存超高層を淘汰する

 最近の超高層住宅はロビーが大きく、パーテイールーム、図書室、会議室、展望ラウンジ、場合によっては宿泊室、プール、フィットネス室、などがあり、共用部分はいたれりつくせりである。マンションの戸数規模が大きいほどこれら共用施設は充実する。さらに玄関の受け付けには作業着姿の管理人に代わっておしゃれな制服を着たコンシェルジェが迎えるから、全くホテルに入る感覚である。夢を売るのが近年の傾向である。都心に立地すれば、多くの知人からうらやましがられることは間違いない。
 ところで超高層マンションは値下がらないと言われてきた。これには前から疑念を持っていた。2011年の東北の震災直後(震災による住宅不足の影響を排除)に仙台市の超高層住宅の中古の広告のm2単価を建設年順に並べると、19事例が見事に一直線上に分布した。古くなるほど低価格化し、19年経過の60m2、33階建てで300万円が出現していた。これではリゾートマンションと同じである。後続の超高層住宅も酷く低価格化している。超高層以外の分譲マンション中古単価を集計しても築年数で急激に減価する。仙台市では市民が中古を信頼しておらず、新築ばかり追い求めているようだ。新築の超高層は東京に比べれば安いが、市内ではどの時期でも新築の超高層が最も高額であったはずだ。第1号の超高層は高額所得層が好んで購入したそうだから、僅かな期間に様変わりした。ただし19事例で落日と断定するのも危険と思い、兵庫県の超高層住宅の中古価格の集計を試みた。兵庫県の超高層住宅棟数は埼玉県、千葉県とほぼ同数で、多く見積もっても90棟程度である。結果を図に示したが、近年は、幹線鉄道駅前に建設が集中し、より高層化している。中古価格の経年低下傾向は仙台市とほぼ同じである。この傾向を示す要因は以下の通りだ。
 (1)一般のマンション以上に立地による選別がきつい。徒歩10分以上、徒歩圏でも鉄道支線またはバス便にあると不人気化する。人口減少市では鉄道幹線駅から数分以内でも同様である。(2)低価格化するほど管理費と中古価格のミスマッチが顕在化し、買い手を失いやすい。それによってさらに価格低下すればミスマッチは拡大する。(3)修繕積立金は高くても負担感を与えるが、低ければ将来への不安感を与える。多くは据え置かれ適正金額に程遠い。(4)古いマンションほど、共用施設の魅力が小さい。但し新築マンションの過剰とも思える夢のような共用施設群は、将来価格低下すれば、管理のお荷物になる恐れがある。(5)環境自身が激変することで立地不適合が進行しやすい等である。
 高度成長期にはどの水準の住宅を供給しても売却可能で、中古売却にも不安がない。ただし低成長時代には新築はストックと差別化しなければ売れない。容積率緩和による超高層住宅の建設は差別化にぴったりはまるが、その大量供給は、結果的に高経年超高層ストックの価格低下を促進した。地域の人口変動もこの動きに拍車をかけた。この一連の動きをフィルタレーションと言うが、住宅ローンの支払いを終えた頃、資産価値はゼロに近づく。今後も大量供給が持続すれば、夢の超高層が後悔の館に変わる恐れが強い。(つづく)



(2013年10月号掲載)
(松本 恭治)