新マンション事情

75.ゼロサム、マイナスサム時代の都市間競争/都市が生き残れなければマンションも残れない

 日本の総人口が初めて減少したのは2011年で、国の機関の予測では、2010年12806万人が2060年には8674万人になり、4132万人が減少するから、現在のアルゼンチン1国が消える勘定だ。人口が減ると高齢者比率が高まり、県民所得が低下するから、税収減にもつながる。大都市圏レベルの比較では東京大都市圏が一人勝ちし、近畿圏の不振が目立つ。北海道・東北・四国・九州の不振は昔からである。都道府県別にみると、秋田県が1982年から長崎県が1984年から人口減少した。以降、少しずつ人口減少県が増えて、2011年時点で前年より人口増加中は埼玉、東京、愛知、滋賀、福岡、沖縄の6地区に限定された。
 いずれも増加幅が減じているから、全都道府県が人口減少に突入するのはもはや時間の問題である。都道府県市区町村の各単位で人口獲得競争が課題になるが、ゼロサムでは人口が増える自治体がある一方減る自治体が生まれる。基本的に人口は大規模都市で人口増加し、小規模都市で減少し2極分解する。東京大都市圏を区市町村レベルで見ると興味深い事実が見えてくる。東京特別区、他県庁所在市では容積率緩和で超高層が林立し、結果として都心から離れた地域の人口を減少させている。関西大都市圏では大半の都市が水面下に没しつつあるようだ。その中で株式会社と言われる兵庫県と神戸市は強力にニュータウン開発を進め、隣接市区から人口と産業を移動させた。ところが、ニュータウン事業が一段落すると、隣接市区は人口減を緩和されただけでなく、一部は増加に転じた。ニュータウンに吹いた風が、何時の間にか逆風となった。ニュータウンのマンション中古価格は暴落した。開発で勝利した地域は開発を続行しない限り、勝利の地位を保てない。
 群馬県では高崎市と前橋市、大田市と桐生市が対決自治体として県民の注目を浴びるが、前橋市、桐生市は目下負け組である。ところが、本当の勝ち組は大規模都市間に立地する小規模町村で、人口、工業生産額、商品販売額をがっちり伸ばしている。負け組は大規模市群の外側に立地する小規模町村で、若者が大規模市に吸収される一方だ。結婚すると大規模都市の中間にある小規模町村に流出する。それを阻止する目的で大半の市で市街化調整区域の開発を自由にした。市町村でしのぎを削った開発競争で、いずこも中心部はガラガラになった。高崎、大田が勝ち組と言っても全身創痍の状態だ。この都市間競争と分譲マンションの関係は極めて密接だ。勝ち組み都市に立地しても中心部に建つマンションは空き店舗と空き家を抱えて管理体制総崩れの事例が多い。適切な管理を行っていても低価格化は免れない。負け組都市に立地すれば、なお悲惨だ。東京特別区は勝ち組の典型に見えるが、林立する高層マンションでは、単身化・匿名化が進行し、中心部はコミュニティ不毛地帯と化している。社会的孤立者増加が問題になるが、不毛地帯での孤立者救済は困難を極める。ゼロサム、マイナスサムの都市間競争は実はつぶし合いに等しい。そこで敢えて誇り高く負け組地域を選択する価値観が生まれたら良い。人口減少を利点に変えれば自然共生型社会が実現する。大都市密着型別荘地でも良い。(つづく)



(2014年3月号掲載)
(松本 恭治)