新マンション事情

77.バス交通機関がなくなる日の郊外団地の運命は 人口減少を上回る速度でやって来る

 図はDIDs人口密度別2010年のバス乗車人員運搬指数である。1975年の乗車人員数を100としている。DIDs人口密度は平方キロメータ当たり原則4000人以上ある高密度市街地の平均人数であり、少なくとも2以上の地域が連続している地域に限定している。東京の市街地密度は群馬県の3倍程度とみてよい。東京都中野区のDIDs人口密度は2万人を超えるから、群馬県の高崎市、前橋市の市街地の4〜5倍の人口密度に匹敵する。
 DIDs人口密度は昭和35年以来地方県では低下を続け、東京、神奈川、千葉、埼玉など大都市圏ではバブル崩壊以降低下から上昇に転じている。2005〜2010年の期間にDIDs人口密度が1%以上増加した県は、多い順から東京都、神奈川県、千葉県、滋賀県、徳島県、埼玉県、愛知県の7地域である。DIDs人口密度6000人以下では市街地は拡散する一方である。ただし、前記の区分はあくまでも都道府県単位の集計だから、市町村単位で見れば埼玉県ではさいたま市以北、千葉県では千葉市以東、以南地域ではDIDs人口密度は低下し続けている場合が多い。DIDs人口密度の低下は(1)人口が減少した場合が多いが、(2)人口が増加してもそれ以上に市街地が拡大した場合、(3)人口が減少しながら市街地が拡大した場合にも引き起こされる。ともあれDIDs人口密度の低下と自動車社会は相互に原因であり結果となる。東京都区部や大阪市など大都市では地下鉄、モノレールを含む鉄道網がバスと競合または相互依存の関係を築くが、自動車保有率が高まると乗合バス利用者が減る傾向が見える。結果としてDIDs人口密度とバス利用率も強く相関する。DIDs人口密度5000人未満の県は44を数えるが、全てバス運送人員指数は30以下で、最も低いのは山梨県の9・9である。言わば公共交通機関の崩壊地域だ。これだけ減じるとバス事業所は、路線廃止、運行本数の間引き、小型バス化で対応するしかない。バス利用を前提に分譲したマンションで突然バスが廃止になったら、居住者は車を買うしかないが、古いマンションは駐車場が不足している。周辺が田畑なら安く駐車場を借りられるが、運が悪ければ高い駐車料金となる。成人家族数分を借りたら負担が大きい。年金生活者なら少なくなったバスのダイヤに合わせて通院や買い物も可能だが、バス通学通勤者がいる世帯は死活問題だ。買い手借り手がいなくなれば中古価格は暴落する。福島県内のマンションを調査したら、別荘地でもないのに最寄駅まで徒歩30分以上が頻繁に登場した。多数のバス路線が廃止された結果である。東京大都市圏の居住者から見れば好き好んで不便を選択するのも不思議だが、実は人ごとではない。関東の1都3県もこれから猛烈な人口減少社会を迎える。住宅がいくら立派でも公共交通が破綻したら、空き家が増える。そこでコンパクトシティーを都市計画目標として掲げる自治体が増えたが、残念ながら成果が上がらない。一旦拡大した都市をコンパクト化するには相当時間がかかる。しかも削られる地域の住民は多大な犠牲を強いられる。総論賛成でも各論は足並みは揃わない。すると地域の自滅を待つのが賢い政策かも知れないが、貧乏くじを引くのは決まって貧乏人だ。(つづく) (2014年5月)



(2014年5月号掲載)
(松本 恭治)