新マンション事情

78.建築寿命より先に社会的に不適合化する超高層分譲住宅 特大建物の滅失は可能か

 素地価格が低い都心からの遠隔地や埋め立て地の大規模開発ではバス、鉄道、商業施設、学校、病院も同時開発し開発によって付加価値を高め、投資が回収された。高度成長期には大資本が得意とする郊外開発の手法となった。一方小資本では、既成市街地の中または既成市街地に密着して住宅開発に専念した。初期の大規模開発地は周辺が市街地化したが、後続開発地は、都市が膨張から停滞・縮小に向かったため、市街地から離れたままとなった場合が少なくない。
 ところで、初期の超高層マンションは郊外ニュータウン内に計画された場合が多い。仙台市の最初の超高層は太白区の山林に計画されたし、兵庫県では芦屋市の海浜埋め立地に多数の超高層群が計画された。ポートアイランド、六甲アイランドも海浜埋め立て地であり、東京都の場合板橋区のサンシャインシティー、練馬区の光が丘団地、江戸川区の清新地区が該当する。いずれも大規模開発地である。
 これら地域では近接した既存住宅がなかったから日照権、眺望権、景観被害などで計画変更を迫られる危険が少なかった。ところが、最近では都心市街地の中に超高層を建てるのに地域の抵抗が少なくなった。都心部では戸建て住宅が激減しつつあることが原因の一つであろう。風は都心部に吹いているから、郊外の超高層は中古市場で勢いを失った。芦屋浜の1979年竣工の超高層では60mで1戸550万円の広告が出る。超高層群の内2管理組合は自主管理である。仙台茂庭の1993年竣工の超高層の中古では60mで300万円が出る。
 そこで、両タウンを訪ねた。芦屋浜は最寄り駅からバス8分だが、現在超高層の市場ではバス便は致命的欠陥に該当する。土木的スケールの大きさに圧倒されるが、5階ごとにエレベーターの停止階があり横通路を確保し他の階は階段アクセスとなっている。
 建設当時の設計思想はバリアフリーより、プライバシー優先だ。住民の高齢化で更に不人気化した。周り3方が海も不人気の原因になる。住宅地の人口減少で地域内唯一のスーパーは買い物客の減少で活気がない。撤退したら中古の値下がりは必至だ。仙台市のMニュータウンも現在不人気化したが、鉄道計画の頓挫が原因である。最寄駅からは遠く、仙台駅までの公共バスの運行頻度が少ない。多くの住民はマイカーが頼りだ。併設の多数の高層住宅群もエレベーター停止階は限られている。さらに斜面地に建っているから高齢者にはきつい。高台になぜ超高層を建てる必要があったのか疑問にさえ思う。敷地内に計画した人工の川には経費節減のためか水が一滴もない。小学校の生徒数は激減状態が続く。高齢化・人口減少でスーパーが撤退したら、住宅地の維持は困難化する。建物の外観は目視で分るほど悪化している訳でないが、不人気化がボデイブローのように地域崩壊の原因になる恐れはある。地域の再生、延命を考えることが最優先課題だが、その先の終末処理を今から考えても無駄ではない。来るべき人口減少社会ではニュータウンの閉鎖・住民の集団移転も避けられないであろう。勿論、建て替えは不可能だ。(つづく)


(2014年6月号掲載)
(松本 恭治)