新マンション事情

81.巨大化・複合化する市街地開発事業の行方/市街地の再生が目的か事業そのものが目的か

 このところ虎ノ門ヒルズと山手線の品川−田町間の新駅設置による駅周辺の市街地再開発がマスコミに大きく取り扱われている。両方とも経済効果が大きいらしい。衰退する地方都市の中心商店街からみれば、じつに羨望の的だ。地方都市の中心街再生が論じられてから久しいが、なぜか以前にもまして再開発事業が東京の複合用途の巨大超高層をモデルにする傾向が強まっている。
 小規模な計画では中心市街地の衰退に飲み込まれる危険性があるが、超高層住宅人気にあやかって巨大化することで、人の流れを作り出し商業の活性化と併せて居住人口を増やすのが目的である。不況にあえぐ建設業界からすれば目的と見通しがなんであれ巨額な投資がなされるのを歓迎する。推進する首長の政治的支援者になる。
 岐阜シティータワーはそのような思惑を背負って2007年に竣工した。43階、社会福祉法人新生会、地域医療振興会、岐阜県住宅供給公社、1-2階を商業施設・イベントホール、3階は医療・福祉施設、4階岐阜放送、5-14階高齢者向け優良賃貸住宅108戸、15-42階分譲住宅243戸、43階展望室とてんこ盛りである。JR岐阜駅前だからさぞかし賑わっているかと思いきや、商業施設階の客はまばらである。隣接する繊維問屋街とかっての名店街と思しき周辺の商店街は、はじから閉店だ。国勢調査結果を見ると岐阜市の中心街には若者が居住せず、老人比率が高い。さらに岐阜市全体が高齢化している。この流れに逆らって中心街に人を呼び込むのは至難の業である。
 三重県のJR桑名駅前再開発ではさらにすごい。現在のビルは2006年竣工の再再開発ビルだ。隣接のアーケード商店街は点灯していないから昼間も暗いトンネル状態が長く続く。再開発ビルは中心商業地区の衰退に飲み込まれているから、今度こそはと再再再開発事業が行われる可能性が無いでもない。現状の再再開発地区に超高層マンションの計画があったが、着工されていないのがせめての救いだった。なぜ、駅前が衰退するかは簡単だ。郊外に大駐車場付きの大型商業施設が次々開業するし、一家に2台駐車可能な戸建て住宅やマンションが供給され、教育施設、病院、診療所までもが郊外化するからだ。若い店主は店も住宅も郊外に移す。中心商業地に残るのは年金店主ばかりで後継者は生まれない。そんな中心商店街の再生、コンパクトシティーを標榜するのが市役所と地元商店街である。ところが、郊外開発を続けるのだから、栓が抜けた風呂に水を入れるのと同じだ。勢いよく入れたら多少は水がたまるが、一瞬に過ぎない。昔の再開発事業と違うのは超高層住宅の併設である。居住目的と事業目的の空間の合築で生まれる区分所有ビルが抱えるのは共同管理の難しさである。設備や外壁仕様も異なる空間同士で、平等な費用負担を求めるのは難しい。大型事業所が撤退した後、空き空間となれば、滞納問題だけでなくビルの経済価値も落ちる。かくして日本中に危ない再開発事業ビルが増えて来た。廃墟の超高層住宅誕生の下地は十分ある。これでは再開発事業は建設業者への救援事業に過ぎない。いっそのこと駅前を平置きの大駐車場にしたら、失敗しても気苦労はない。勿論建設費は不要だ。(つづく)


 写真は岐阜駅前、周辺の商店街店主は、残り僅かな客を奪われたと言う。再開発ビルと周辺は共存共栄を達成できるとは限らない。既存商店街の崩壊促進または共倒れも起こりえる。

(2014年9月号掲載)
(松本 恭治)