新マンション事情

83.生産年齢人口の減少が意味するところ/東京一極集中の脆弱さ

 都道府県別の生産年齢人口を人口増加率別に90〜95年、05〜10年の2時期を図で比較した。いくつかの特徴が見られる。90〜95年では(1)人口減少は13自治体にとどまり34地域で増加した。特に東京都を除く大都市圏の埼玉、千葉、茨城、神奈川、滋賀、宮城、沖縄(7地域)が増加の先頭に立っていた。大阪、京都、兵庫は東京大都市圏に比べると人口そのものは停滞しているが、このうち兵庫の場合は大震災直後で一時的に人口が落ち込んでいる姿と解釈してよい。震災がなかった85〜90年の人口増加率は2.4%で、大阪府0.8%、京都0.6%に比べて格段に高かった。(2)最大の人口減少県は島根県であるが、マイナス1.2%である。(3)人口減少率と生産年齢人口減少率はほぼ比例していた。
 一方0〜10年では前述の傾向とは異なった傾向が見られる。(1)9自治体が増加するに留まり、38自治体が減少した。(2)生産年齢人口が増加したのは沖縄県と東京都に限定された。(3)人口増加率に比べて生産年齢人口増加率は4%程度低い値になった。これはいずれの県も高齢者の人口増加が著しいためである。(4)この状況下で東京都は総人口・生産年齢人口ともプラスに転換している。まさに東京の一極集中であるが、地方の県は少子化で、送り出す余力は今後低下する。90〜95年での人口増加の先頭集団8地区の内茨城、宮城の2県の落ち込みが激しい。茨城県は東京からの人口溢れだしが減じたこと、宮城県は東北全体の経済の停滞を反映している。(4)最大の人口減少県は秋田県でマイナス5.2%である。
 ところで、阪神淡路大震災が起きたのは1995年で、兵庫県は一時的に人口減少したが、元の状態に戻ろうとする復元力はあった。日本全体が人口増加し、生産年齢人口も同じように増加した。一方2011年の東北震災では宮城県、福島県、岩手県は人口減少だけでなく、生産年齢人口の減少が加速しつつあるから、震災がなかったとしても経済環境は悪化していた。地域復興の余力は兵庫の震災時に比べて格段に弱い。復興が長引くほど生産年齢人口が減少していくのだから、復興は延期もしくは達成困難になる恐れが強い。生産年齢の人口減少率が高いほど、県民の高齢化と県民所得の低下が同時進行する。すると分譲マンションの中古価格は低下する。特に点線で囲まれた県では深刻だ。非木造共同住宅の空き家化は既に進行中で、分譲マンションの空き家化も現実の問題となりつつあるようだ。マンションの選別はますます強化される。低所得者に特化したマンションは問題を多く抱え込む。それが少数派から地域によっては多数派に変貌する。人口の減少による諸問題は、今後各方面で雪だるま式に膨らむ。東京の一極集中は地方の衰退を土台にして成り立っている。但し、東京に若者が集中しても就業形態は不安定だから、未婚・晩婚、子供を持てない夫婦が増えている。地方の再生が急務だが、そこで仮に地方再生が功を奏したら、今度は東京の社会・都市構造が崩れる。滅失・更新困難な単身用・小規模家族用の高層マンションが多数空き家化する。特に東京都心部はその懸念が強い。あちら立てればこちら立たずだ。更に出生率を上げても社会の生産に貢献するには20年近くかかる。(つづく)


(2014年11月号掲載)
(松本 恭治)