新マンション事情

84.東京ドリームの崩壊/地方創生の前に東京が沈没する

 東京は今後も一極集中を続けられるか長く考えて来た。2010年の人口を100とすると2040年時点の指数は全国平均で83.8、沖縄98.3、東京都93.5、滋賀92.8、愛知92.5、神奈川92.2で、これまでの常連が並ぶ。最低は秋田県の64.4である。秋田は農業以外の産業がないから仕方がない。上位5地域は結構健闘しているかに見える。ところが年齢別にみると、東京都が健闘しているのは65歳以上が増えているからであり、15〜64歳はかなり減少している。そこで、2010年時点を100にして住宅購入層の中心30〜39歳に限定して同様の指数をみると、驚くなかれ東京の指数激減が目立つ。2015年には91.5(上位3位)、2020年には82.4(3位)とここまではまだ上位だが、2025年71.9(17位)、2030年64.3(38位)、2035年60.5(41位)と転落の一途である。この時点の42位以下は、青森、高知、福島、北海道で最後が秋田県の57.2である。秋田県と東京都の差はわずか3.3である。2040年の東京都の指数は59.5で落ち込みは1.0と少なく、順位では35位に回復する。大阪府の場合は低位安定型である。2040年の指数は59.1で順位は34位である。問題は東京都が青森、高知県並に落ち込むことだ。30〜39歳が4割も減ったら、マンションは空き家だらけになる。高齢者が増えるから、人口を一見維持してるように見えても通勤者は激減する。通勤電車は大幅に空く。運賃引き上げ、運行本数削減は避けられない。遠隔地通勤は今より不便になる。分譲マンションの新築は売れなくなるからデベロッパーは生き残りが大変だ。地域によっては中古はタダ同然にまで落ち込む。マンションの建て替え円滑化法は公文書館入りだ。機能したとしても2階から落とす目薬のようなものである。そこに地方再生なんぞ成功したら、東京は単なる年金生活者の街に変貌する。なぜ東京がダントツの落ち込みを示すかの理由は簡単だ。出生率は全国一低い、しかもこれを長く続けて来た。2001年〜2005年の合計特殊出生率1.0世代は2031年には30歳に達する。全国の出生率低下も同じだから、もはや東京へ若者を供給出来ない。東京ドリームは、今は色あせている。東京の大学に進学して派遣社員になって、せせこましい住宅に住み、ローン負担にあえぎ、結婚、出産をためらい、人によっては生涯未婚を続けるくらいなら、賃金は安くても親元で暮らした方が安心だ。子供が二人以上いれば一人は東京に出しても良いが、一人しかいない状態では出しにくい。東京の出生率低下と一極集中のつけが2035年に一挙に噴き出す。東京の繁栄は終わりに近付いている。少なくとも繁栄の足元が崩れつつあるのは疑いない。
 ところで、2006年以降出生率回復が全国的傾向となった。落ち込みに歯止めをかけた点は良い。ところが回復理由の直接的決め手が見つからない。婚活ブームが原因とすれば、マインドの切り替えも有効になる。但し人口を維持するにはほど遠い。フランスのように教育費・医療費がただで住宅と子供手当があって、正社員で働けて、失敗しても再挑戦の機会があって、老後保障があって、未来に夢を持てたら結婚・出産問題は即解決する。勿論離婚して幸福を得る場合もある。つまり問題の根源は日本政治の在りようだ。(つづく)


(2014年12月号掲載)
(松本 恭治)