新マンション事情

85.東京都の出生率低下は、とっくに危険ラインを超えている/見かけは繁栄と土台の崩壊

 前回は東京都と地方の合計特殊出生率の低下が東京の一極集中を解消することを述べたが、今回はその東京都を更に詳しく報告する。東京の合計特殊出生率が1.0に低下したのは2001年であるが、2005年までほぼ持続し、以降僅かずつ回復し、2012年までは2009年、2010年1.12、2011年1.02、2012年1.09とやや心もとないものの回復しつつあるようだ。広域の集計ではばらつきが押さえられるが、小地域では最大、最小の格差が生じる。2005年の東京都内での最大は福生市で、最小は渋谷区の0.70であるから、2倍の開きがあるが、福生市の出生率では人口維持は難しい。2005年に底辺グループ〜2012年に大きく回復した地域で港区0.47、千代田区0.39、中央区0.32が上げられるが、何れも短期間に超高層住宅が大量に供給された地域である。容積率緩和が功を奏した感が有るが、この短期集中がとんでもない事態を生み出すのである。郊外のニュータウン開発では、初期の人口構成は20代30代の若い親と、その子供が大半で、活力に満ちた住宅地が出来上がるが、20年も経過すると住民の高齢化の懸念が見える。30年も経過するとニュータウンは周辺都市の高齢化しつつある人口構成を突き抜けて高齢社会が現実化する。40年も経過した分譲団地では高齢単身者の割合が増加し、空き家も蓄積する。売れない、借り手がいないばかりでない。老人ホームに入所した高齢者が病院に長期入院したら、老人ホームから契約解除される恐れがあり、退院先が無くなるからだ。家具・家財を処分する元気もないのが実態だ。ところで都心区が自ら人口増加を図りにくいのは、未婚単身者ばかり集中する結果によるが、更に地方から若者が転入しなくなるのだから、住民の高齢化は必至である。東京都の2010年の30〜39歳人口を100とした場合に、2040年の指数は59.5である。
 市区町村別に見ると、豊島区42.2、渋谷区42.6、杉並区45.4と落ち込みは大きくなる。中央区、千代田区も落ち込みは激しく下位12位内に入る。稲城市76.4、東村山市74.4、東大和市71.6とは大きな差である。現在の人気地域が、郊外の不人気地域の後塵を拝すと言うのも皮肉な結果である。マンション購入年齢層の6割弱失ったら新築・中古の市場はどのように変わるか不安である。現在建てれば売れる超高層が不人気住宅になる恐れは十分あろう。元々管理会社の儲けを多くするため、管理費ばかり高くして、修繕積立金をおろそかにしている場合が多いから、年数が経過すれば、破綻が表面化する。
 ところで、各デベロッパーは差別化で生き残りを図るに違いない。それらは、(1)スマートタウン、省エネ(2)小世帯化した買い替え層を狙い、共用部分、各住戸の居間をよりゴージャスにする(3)超超高層化を図る(4)高齢者向け介護・食事サービス付き区分所有建物を供給する。資金回収が速く、既に各地に高齢者向け超高層分譲マンションが急速に増えつつあるが、果たして痴呆化が進む高齢者が多く、正常な管理組合運営が可能か懸念は多い。外部からの監視が必要だ。小規模デベロッパーが倒産するのは避けられない。それにつけても市場に街づくりを委ねっぱなしの日本で、まともな街づくりは不可能だ。(つづく)


(2015年1月号掲載)
(松本 恭治)