新マンション事情

88.最近の空家報道の過熱と嘘/報道者の責任か自己満足か?

 最近、NHKだけでなく民放も含めて空家報道が増えている。近所迷惑な空き家を問題にするのは結構なことだが、そこに出てくる住宅評論家も研究者も扱っているのは間違った数字である。住宅土地統計調査の結果を総務省が記者会見すると、その数字がしばしば独り歩きをする。
 記者発表では2008年調査結果では13.1%だが、2013年調査結果では13.5%で、過去最高とするものだから、東京都も空家だらけではないかと想像する。気になって街を歩けば空き家が目につくが、視聴者もテレビ局に通報するから、街中空き家が増えたような気がするのである。
 テレビ企画は今空家特集をすると視聴率が稼げるらしい。そこで手近な東京都の住宅地の空き家問題を報道する。空家対策条例を制定した東京都の一部の区の担当者にインタビューをし、空家対策の必要性を言わせるのである。評論家や研究者がそれに便乗して空き家対策を論じるのだが、「空き家が増える原因は更地にすると固定資産税が6倍に跳ね上がる」とか「空き家がこれほど増えているのにマンション建設が多いのは問題が多い」などもっともらしいのである。実は報道関係者も、評論家も、研究者も都道府県別の正しい数字を見て論じていないことはすぐわかる。全国の空き家率増加の数字は正しくても、都道府県別に見ると、意外な結果が見えてくる。1998年〜2013年の空き家増加率は東京都0.1%、埼玉県1.0%、千葉県0.0%、神奈川県0.9%で、15年間殆ど変わらない。一方山梨県7.2%、愛媛県6.0%、鹿児島県5.6%、山口県5.1%だから、地方が深刻である。地方は戸建て住宅が多いから、固定資産税問題が当たらない訳ではないが、大都市圏、特に東京都では空き家の主流が圧倒的に集合住宅である。
 集合住宅は更地にしたくても更地に出来ない事情がある。最後の一人が退去するまでは家を取り壊せない。高齢のアパート経営者なら借金してまで建て替えたくないとか、相続問題を複雑にする恐れもある。分譲マンションなら区分所有者の合意が得にくいことなどが理由になる。実は自治体の空き家対策条例の多くは集合住宅を対象外としている。NHKなど報道機関の番組構成の常套手段は、前半に問題を指摘したら、後半には解決した事例を加えることになっている。これが実に粗末な場合が多い。スラム化した分譲マンションの姿を見せた後、解決策として賃貸マンションの減築実験事例、戸建て空き家や非住宅の一括所有ビルの福祉の居住施設への作り変え事例を報道したことがある。技術的に不可能ではないが、区分所有型マンションでは合意を得ることが困難だ。出来るくらいならスラム化しないよと言いたい。期待して見ていた分譲マンション居住者ならがっかりする話だ。分譲マンションの建て替え成功事例を見せて、それを老朽マンションの解決策と煽る場合もある。
 老朽マンションの建て替えの必要性は高まっているが、可能性は遠ざかっているのが現状だ。5階建てならまだしも超高層に至っては、将来取り壊すことさえ困難だ。それを指摘する番組は殆どない。とにかくどんなもんでも解決事例を見せておこうとする番組製作者の横着さと無知と自己満足が透けて見える。受信料を取るNHKにせよ、勉強して欲しいと強く言いたい。(つづく)


(2015年4月号掲載)
(松本 恭治)