新マンション事情

90.単身世帯の人口予測/増えるゴミ屋敷の懸念

 図は東京都の単身者についての現状と予測結果である。単身者と言えば地方から上京した未婚の若者を指す場合が多いが、2040年の姿は大きく変わる。若者は激減し60〜64歳をピークにした中高年が主流を占める。さらに85歳以上の超高齢者は3倍以上に増える。一見、2010年時の若い単身者が加齢した結果に見えるが、2010年と2035年のピークは35歳の差が生じている。
 高齢化のスピードは速い。2040年時点の60〜64歳のピークは2050年には70〜74歳に移動する勢いだ。これは加齢による年齢移動と解釈するより、居住者の入れ替えによって分布が変わると解釈するのが自然である。従って高齢単身者の増加は、高齢単身を生み出す全人口の高齢化と配偶者死亡等を反映している。
 若年の単身者は就職・進学で上京し、未婚が多いが、多くは結婚・同棲、出産で家族世帯に変わる。中高年の単身者には、晩婚未婚の世帯も残るが、配偶者との離婚、死別、兄弟等の世帯分離で生じやすい。従って若年単身者がワンルームなどの賃貸住宅に集中居住するに比べて中高年の単身者の住宅は家族向けが多くしかも分散する。若年単身者が減れば、ワンルームマンションの空き家が増えるが、配偶者との死亡、離別、同居親との死別は分譲マンションや戸建ての大規模住宅でも生じる。借家に限定しない。事実単身者の戸当たり住宅面積は高齢化するほど拡大し、持ち家の規模に近づく。
 東京の持ち家は元より小規模住宅が多いが、地方、特に東北・北陸では戸当たり200mを超える場合も多く、単身高齢者による住宅管理は重荷になる場合が増える。単身者によるゴミ屋敷はあらゆる年齢で発生するが、特に虚弱化した高齢者世帯では整理整頓をしにくくなる。戸建て住宅の場合は庭の手入れが悪化し、室内のゴミも外に出されやすいが、集合住宅では鉄扉1枚で内外を遮断するから、不衛生状態を外部から発見しにくい。
 筆者は分譲住宅居住者へのアンケート調査で、過去に何度もゴミ屋敷を訪問した。足の踏み場がないほどの室内で、座る場所を確保するため荷物をどかしたら、腐った畳が出てくる場合があった。フローリングの表面がべっとりしている家もあった。風呂場がゴミ置き場になっている家では、何年も入浴していない。畳の目に白い粉が詰まっている家では、同行した保健婦から、おもらししてウンチが乾いたものと説明されて、靴下を脱いで帰った記憶がある。怪しき家を訪問するには簡易用の薄手のスリッパが必要だ。勿論家の中に入れてくれたのは私が近隣の者でなかったからで、近隣の目を避けてひっそり暮らしている。
 さて85歳以上は、今後急速に人口を増す。実はこの年代は極めて移動が激しくなる。しかも広域移動が実に多い。施設入所、親族宅同居・近居が主な原因である。家財道具を置いたままの移転が多いから、賃貸も売却も出来ない住宅になる。家の持ち主が亡くなっても住宅が迅速に処理されるとは限らない。相続問題がこじれたら膠着状態になるし、無事相続者が現れても片付けられない場合も少なくない。次々起きる難問に対応すべきは一体誰であろう。整理整頓の助成制度は福祉行政にないし、勧告も撤去命令の法律もない。(つづく)


(2015年6月号掲載)
(松本 恭治)