新マンション事情

93.住宅種別の単身世帯化率/コミュニティ形成不全の背景

 ここでは、住宅種別の2013年における全国・地域別の単身比率について述べる。単身世帯が最も多いのは民営借家の55.6%で、次いで給与住宅55.4、UR・公社住宅43.7、公営40.3、持ち家共同住宅30、戸建て16.7である。持ち家共同住宅は大都市圏内県で低く、東北・北陸、北関東で高い。公営住宅は兵庫県で最も高く、51%、鹿児島県で25.6%と最も低い。UR・公社は多くが4割〜5割に達する。
 ここで注目すべきは、公営・UR公社等の公共住宅の単身率の高さである。両者とも県平均では50%超の場合も見える。市区町村別で見ると、それぞれ県庁所在市、都心区で単身世帯率は高い。団地別で見たら70%を超える事例が出現しても不思議でない。設置当初は、都市に居住する家族世帯の住宅難緩和と町づくりを含む新しい住まい方の提案と普及が目的であったが、現在は長期居住で高齢単身化した世帯に特化している。民営借家に比べて永く住み続ける権利は保証されるが、住宅規模と世帯人数のミスマッチが進行している。団地またはマンション毎に其々の経営が一元化しているため、ストックの活用や終末処理は経営者の判断に委ねられるが、最低限の管理に終始するため、問題住宅地に転化しやすい。更に、建替えても戻り入居を保証する為、小規模住宅の再生産に繋がりやすい。計画と管理に社会計画はない。
 持家戸建て住宅の場合、単身世帯では60歳以上が8割を占める。他の住宅に比べて単身率は低いが高齢者に特化し、空家予備軍になる。ところで持家共同住宅世帯の単身世帯化は特別の意味を持つ。単身世帯化率こそ全国平均では30%で公共賃貸住宅より低いが、都道府県別では人口減少が激しい東北地方の持家共同住宅居住世帯は秋田県の54.5%を筆頭に総じて高い。主に中高年女性単身者が占める。ところが市区町村別では大都市の中心区で高く、特に東京都心区の持家共同住宅の単身世帯率は50%近くに達している。元データーの住宅土地統計調査結果では分譲マンションの中の借家と、空家を除外している。更に持家の単身世帯を除くと2人以上持家世帯の分譲マンション全戸数に占める割合は大幅に低下する。東京都の隣接県では持家共同住宅の単身世帯率は25―29%で、東京都より低い。
 原因は家族世帯が郊外に押し出されている結果である。それでも居住世帯の高齢化で年間1%程度の速度で単身世帯率が上昇している。今後人口の高齢化が進めば、持家共同住宅の単身世帯化が加速する恐れが強い。マンション単位で見ると、なお地域社会崩壊の恐れを理解しやすい。お茶の水駅から徒歩5分。築後15年のファミリー向け住宅は30戸の内10戸が空家、15戸が借家、5戸が持家世帯であった。内2戸は現役で働く高齢の単身世帯であることが判明した。名ばかり役員が居るだけで、管理会社に管理組合の全権を委ねていた。郵便ボックスに名前が表示されていたのは、企業が借りる5戸のみで、住民同士でも、どの住戸が借家か持家居住か空家かを判別しにくい。中古価格、家賃が高くても、無縁・匿名社会である。交通利便な立地だけが頼りだから、防災、防犯、危機管理については近隣をあてにしない覚悟が必要になる。(つづく)



(2015年11月号掲載)
(松本 恭治)