新マンション事情

94.地方都市の中心市街地とマンション/都市計画不在の混乱

 伊勢崎市は2010年実施の国勢調査では人口20.7万人、世帯数7.6万世帯である。自動車社会の典型都市で、前橋、高崎、桐生、太田、伊勢崎の主要5市の中では人口増加率が最も高いのは工場が多いからだ。順風に見える都市だが中心市街地には閉店舗、空き家化マンションが多い。初めて訪れたら地方都市は疲弊していると感じる人が多いと思うが、実は混乱しているのが実態だ。 車社会だから、駐車場がない店は買い物客に敬遠される。郊外の品ぞろえが多い大型店舗に行けば買い物は1度で済む。中心商業地では用が足せないなら郊外に居住した方が、家は大きいし、敷地も余裕があって、成人家族に見合う駐車場の広さも確保できる。かくして市民は古い中心市街地から新しい郊外住宅地に脱出することが一般化してしまったのである。移転するのは20〜39歳の年齢層である。借家人なら腰も軽い。
 一方、持家に住み続けるのは高齢世帯である。住めば都かも知れないが、住宅を買い替えるに必要な借金は出来ないし、不人気地区に立地する住宅が高く売れる保証はない。結果は中心商業区域、近隣商業区域の高齢化と人口減少と廃屋の蓄積である。工業区域には若い20代、30代が集まるが、社宅、借家があるから県外からも呼び寄せられる。尤も小規模都市の用途地区は同心円上にこれらの地域が並ぶ訳ではない。古い工場地区なら、駅前もあるが、新たな工場団地造成なら広い田畑や山林等の未利用地を活用するから、中心市街地から遠い。要するにばらばらだ。工場の従業員を当てにしたワンルームの低層借家や建て売りが建てられるが、さらに賃貸マンションさえ建てられる。ところが、工場の従業員数は景気に左右されやすい。従業員数の大幅縮小は頻繁にある。工場が撤退すれば跡地には大型店舗が建ち、住宅地にも変わる。郊外の沿道沿いの店舗は同業他社との競合にさらされやすいが、目まぐるしく変わる社会環境にも翻弄されやすい。ところで、バブル期には地元のにわかデベロッパーが多数マンションを分譲したが、売れ残り続出で、会社自体が倒産することが多かった。
 リーマンショック直前のブームでは、大半の分譲マンションは県外の企業が建てた。東京都では分譲マンション供給の都心Uターンが顕著であったから、多分地方都市もそうだと確信したが、購入客はUターンして来なかった。結果はデベロッパーの倒産続出と売れ残り住宅の蓄積であった。販売不振になると機械式駐車場の利用料金をただにし、修繕積立金の額を低く抑え、毎月の費用負担を軽減し販売促進する場合が増える。後で困るのは購入者自身であるが、大半の購入者は適正な費用負担まで考え及ばないのが普通である。
 大半のマンション購入者は初心者だから、管理の経験はない。県内の全中心商業地に立地する分譲マンションは県内分譲マンション数の半分に達する。一見市街地の再生に寄与するかに見えるが、空洞化に飲み込まれる危険性の方が高い。なお、大都市圏の中心部及び鉄道沿線の駅前商業区域はマンション建設が集中している。ところが、単身か子供がいない夫婦に限定されがちで、隣人の動静には無感心が多い。こちらは匿名社会に飲み込まれる恐れが強い。(つづく)



(2015年12月号掲載)
(松本 恭治)