新マンション事情

95.終着駅化する住宅/高齢化、派遣社員化、未婚化、経済の低迷が促進する

 団地再生で対象となるのは高経年団地である。図は町田市のホームページの団地再生資料編から作成した。市の資料は各団地ごとに各基礎調査結果を表示していたが、高齢人口のみ取り出し築年数別に並べ直したものである。調査時点は1992年時と2012年だから20年の変化であるが、各団地の調査時点の竣工後の経過年数は異なっている。
 主な傾向は以下の通りである。(1)1992年時点の高齢化率は何れも5%程度で、団地間、賃貸・分譲での違いは大きくないが、2012年時点の高齢人口割合は高経年団地ほど高くなっている。中には45%に達しているから、このまま進めば間もなく限界集落に至る恐れは強い。(2)最も古い団地が築後31年の1992年時点で10%未満の高齢化率であったが、更に20年経過した2012年では35%に達した。一方最も新しい1983年築の団地は9年経過後の1992年で5%に達しなかった団地が20年後の2012年では25%程度となった。つまり、最近20年間は以前に比べて新旧・賃分に関わらず高齢化のスピードが上がったことになる。原因は多様である。(1)分譲ではバブル経済崩壊以前は住宅の値上がりと所得の安定上昇でローンの返済が軽減されたこと、売却も楽で住み替え計画が立てやすかったこと、(2)若くして住宅購入・賃借した人は家族の成長で住宅困窮感が増したこと、一方、バブル崩壊以降は分譲住宅では東京区部からの購入希望者が激減し不動産価格が下落したものの、世帯収入が低下もしくは不安定化し、借金しても将来の返済の見通しがたてにくくなったこと、(3)家族分解が進み、住宅困窮感が和らいだこと、(4)長く居住することで住みなれたことなどが影響している。分譲住宅では永住意識が強まり、賃貸住宅では転居の希望はあっても、転出困難な人や転出不要の単身高齢者が残るから、結果現在居住している住宅が終着駅化しつつあるのだ。尤も85歳以上の単身高齢者になると終着駅からの転出が激しくなる。病気入院した後、自宅に帰れず、親族宅に一時的に身を寄せたり、施設入所する場合が増える。施設に入所しても、最後の最後まで面倒を見てくれるところは少ない。病院に長期入院すれば施設費と入院費の2重払いになるし、帰るべき施設から契約解除を強制される場合も少なくない。自宅は安全保障のために売却出来ないし、まして虚弱な身では家財道具・住宅処分さえ出来ない。かくして終着駅が家財の保管場所化する場合が多く発生する。
 空き家化しないでも高齢の単身化は持家住宅規模の大小、新旧に関わらず発生する。地方では200mの戸建て住宅を必死に守る姿が多い。家族人数と住宅規模のミスマッチが進行する。元気な内に高齢者にふさわしい小規模でバリアフリーの住宅に地域内住み替えが出来れば、本人にも良いし、資源の有効活用の面でも良い。賃貸住宅の空き家化は若年人口が減少しているのだから、狭い住宅を2戸1にし、家族世帯が入居できるようにするか、用途変更又は撤去も選択肢となる。この実現を阻むのが経営者の高齢化であろう。
 ところで自分の意思で長く住み続けられることの大切さは色々あるが、長く住み続けざるを得ない弊害も多い。緩やかな循環型住み替えが可能なら、空き家も減るはずだ。(つづく)



(2016年1月号掲載)
(松本 恭治)