新マンション事情

96.全住宅数に占める11階以上建物の住宅比率の東京70Km内市区別ランキング/都市景観の地理的分析

 上位ランクインの条件は以下の通りである。
 (1)政治経済の中心 大企業の本社機能集積地区で中央区、千代田区、港区が上位を占める。みなとみらい地区は(3)にも該当する(横浜西区、中区)。業務ビルの高度化に住宅も連動。
 (2)交通結節点 消費経済中心地区として新宿区、渋谷区、品川区、豊島区、台東区などが上げられる。(1)に比べて大学生が多い。(1)(2)は急激な高層化で社会的歪みの単身化、匿名化、無縁社会化が進行する。防犯、防災上の問題地区になりやすい。
 (3)海浜埋め立て、河川流域土砂堆積地区の軟弱地盤で、美浜区、江東区、江戸川区、浦安市、墨田区、荒川区、三郷市、みなとみらいなどで地盤まで深く杭を打つ。高層化の範囲が広い。
 (4)遅れて都市化した地区で、印西市、稲城市、白岡市、昭島市など。都心から遠隔地での高層化だから、マンション需要の都心回帰に今後の不安が残る。
 (5)工場跡地が多い川崎市幸区、中原区、戸田市、江東区(再掲)等である。超高層のホットスポットを形成するが、跡地の規模次第で必ずしも市域全体の高層比率が高い訳でない。ランク外の相模原市(11階以上比率7.4%)にも超高層ホットスポットがある。
(ランク外の低比率地区)
 (6)高さ規制地区で、歴史的景観保護都市の独自性を強調する。鎌倉市(1.9)、川越市(4.0)が該当する。京都市、奈良市も同様である。
 (7)は周辺区が高層化する中で独自の人気を維持する。狭い商業地区の後背地に高級戸建て住宅が多い。目黒区(7.0)、世田谷区(6.4)、杉並区(3.9)、武蔵野市(6.2)などである。
 単なる郊外地区は駅前に高層住宅が集中するが、市域の多くが戸建て主流のベッドタウンである。平坦地では都市計画がなく、地元の中小工務店が低水準の建て売りを行った。スプロール地帯では公園も少なく景観は悪い。起伏がある住宅地はURや大手デベロッパーによる計画開発が多く、横浜市内、川崎市内には「隣の芝生」に代表されるテレビドラマの舞台になったしゃれた住宅地が多い。ただし今や高齢者の一人暮らしと空き家が増えている。起伏が多いことから買物難民も増える。早めの移転が地域課題になっている。
 積極的に自然保護で高さ規制、建築規制する地域は殆どない。自然切り捨ては多い。国立市の上原元市長の高層マンション建設反対は歴史的自然の景観保護を訴えた行為であったが、司法の壁に阻まれた。小地域の建築協定ではスポット的にはあっても市域全体への影響は乏しい。多くは相続の度に分割建て売りに変化し、自然が消滅する。開発不適な丘陵地があれば、自然が残る。武蔵野の面影は僅かに残った農家の屋敷林に限定される。
 人口増加に向けた都市間競争になると容積緩和は手っとり早い。ただし重ねて緩和すれば副作用も大きい。より大規模化、高層化が進むと非住宅施設と併設化する。高層住宅の足元は非住宅の商業優先空間となる。住宅が急増しても子供がいない地区が生まれる。さらに単身化と短期居住者の増加で、無縁匿名社会化が促進される。(6)(7)地域では容積緩和と商業区域を拡大しないことがむしろ生き残り策となろう。(つづく)



(2016年2月号掲載)
(松本 恭治)