新マンション事情

98.持家共同住宅で縮小する世帯規模/都心の小規模化と遠隔地の小規模化は背景が違う

 グラフから以下の傾向を読みとれる。
 (1)東京の0〜10km帯と60〜70km帯の世帯人数が小さく20〜40km帯がファミリー世帯が多い。
 (2)小規模世帯化がどの距離帯も年々進んでいる。
 (3)世帯規模の頂点が40〜50km帯から20〜30km帯に移動している。
 (1)の両端でなぜ世帯規模が小さくなるのかは、都心地域は地価が高く、住宅規模が小さくなる。未婚単身者の持家共同住宅取得者が多いことが、世帯規模縮小の一因ともなる。
 60〜70km帯では戸建て住宅が中心で、借家が少ないから住宅の平均規模は大きく年々拡大しつつあり、持家共同住宅は相対的低水準住宅になる。
 20〜50kmで世帯規模が大きいのは、郊外のファミリー向けマンションを購入するため、都心から転居する世帯の住宅需要が大きいことを意味する。
 (2)については全住宅的傾向で3世代世帯の減少、少子化、晩婚を含む未婚単身者の増加、長寿化による配偶者の欠損、離婚の増加が反映する。世帯が分解することで空き家化が有る程度防げるが、小規模世帯化は地域社会に大きな影響を与えている。
 (3)はマンション供給が都心方向に持続的に移動していることを反映している。なお、持家共同住宅の都心からの平均距離は2013年時点で22.2km、戸建て持家住宅で33.3kmで両者の差は拡大する方向にある。大都市圏の収縮及び、高層マンションの大量供給が反映している。
 (3)さらに各地域の単身割合を年齢別集計すれば、0〜10km帯では中年未婚者の持家共同住宅取得が多く、従って供給される住宅規模は小さくなりやすい。一方60〜70km帯では家族分解後の高齢単身者が増えて居る。後期高齢者が増えると空き家化する可能性が高い。空き家を埋めてくれる単身者が居ない。これら(1)〜(3)で何が問題化しているかは以下の通りである。
 (1)単身化による匿名化、無縁社会化、コミュニテイの衰退で特に都心マンションでは玄関の郵便受けだけでなく、住宅の玄関にも表札に名前が記されていない住宅が増えている。子育て世代が居ない場合は人間関係も希薄になりがちだ。
 (2)管理組合役員のなり手不足、管理組合機能の低下が進行する。金さえ払えば管理会社が何でもするが、管理会社をチェック出来ない。管理会社にとってはありがたい。
 (3)郊外マンションの空き家化は高齢者の入院、老人ホーム入所、親族宅への一時的身寄せで起きやすい。言わば家財道具の一時的倉庫化が恒久化しやすい。
 (4)都心からの遠隔地またはバス便マンションの中古価格低下等である。ファミリー世帯の需要が減じ、単身者も少ない。特にバス便の場合は市場で脱落しやすい。
 1枚のグラフから以上が推測されるが、推定通りか否かは他のデータの分析でも確認できる場合が多い。データが無ければ現地調査するしかないが、平均的な動向を事前に把握することで、現地事例を位置づけやすい。
 ところで小規模世帯化が持続すると、分譲マンションの未来が心配になる。特に古い時期に大量に供給された狭小ストックの経済的魅力はさらに減じる恐れは強い。(つづく)



(2016年4月号掲載)
(松本 恭治)