新マンション事情

99.投資物件のなれの果て/差押えされる内が華

 バブル経済の頃、「投資物件を購入して老後の生活にゆとりを得ませんか」と言う不動産広告を見て心穏やかならぬ経験をした人は多いであろう。
 ところがバブル経済がはじけて、借り手もいなく、中古は二足三文化し、ローン返済や固定資産税等を滞納し、次々競売に付されている状況を見て、買えなくて良かったと胸をなでおろした人も多いはずだ。そこで、期待が失望に転換した住宅を身近に見ると、投資物件に関係する人々の素顔と建て物の不良化が見えてくる。ここでは二事例の投資物件の惨状を報告する。
 Cマンションは分譲後間もなく落雷がエレベーターを直撃し、管理組合が修繕に対応できなくなったことから、一時全戸が空き家となった。各階廊下や玄関周りはゴミの山が築かれ、不衛生ビルになったが、2009年2月に所有者有志が集まり、管理組合が再結成された。但し、所有者間の不信感から2年で管理組合は解散し、所有権者有志で自治会を結成した。現在20戸中に11世帯12人が居住している。一時管理会社に委託管理をしたが、滞納者が多いため、契約を解除した。3戸の持ち主が行方不明だ。駐車場の地下にある汚水槽の清掃をしたことが一度もないため、頻繁に汚水が地面に湧きあがり不衛生であり、悪臭もする。エレベーターは使えないままだ。
 Rマンションには事故は無いが、借り手が少なくなり、管理費等の滞納が増え、結果的に管理会社は手を引いた。良く言えば自主管理だが、実態は管理放棄である。15戸の内8戸の電気メーターが外され、居住住戸は4世帯に減じている。階段と廊下には鳥の糞が堆積し、天井には蜘蛛の巣が張る。
 ところで競売等の所有権移動を比較すると興味深い事実が浮かんでくる。行方不明住宅や電力メーター取り外し住戸は差押えられていない。所有権移動は両マンションとも競売が中古売買を上回るが、Rマンションでは競売も中古売買も少ない。売れない貸せない状態だからばば抜きが出来ない。行方不明が唯一の解決策だ。但し元裁判所書記官の話では競売申請するにも結構お金がかかる。経済価値が無くなったら自治体も差押えを諦めるそうだ。そんな中で超低価格で競売落札する者はどんな人かも興味深い。Cマンションでは5戸、4戸、2戸取得者が各1人ずつ居るが、揃って管理費・駐車場費用の滞納者である。自己主張が強く互いに不信感の塊だ。5戸の所有者は再生管理組合の運営が気に食わないとして管理組合を勝手に脱退宣言するが、対抗馬の4戸取得者は、代表者だがそれに全く対応しない。
 登記簿を見て分かったが、固定資産税滞納で差し押さえられており、一部は落札されていた。これでは他の滞納者に督促出来ない。元々競売落札者は転売転貸が目的だから、共同管理には興味がなく、モラルもない。両マンションとも大規模修繕を行ったことはなく、計画もない。いわばジリ貧マンションだ。結果的に自分が掘った穴から抜け出せない。今後投資マンションの空き家は一層増えると予測されるが、全戸空家化しても取り壊しは困難である。管理放棄されたマンションへ行政が改善勧告や閉鎖命令する法律はない。なお、借家人相互の交流もない。周辺住民から見れば完全なエイリアンだ。(つづく)


北関東2老朽分譲マンションの竣工後の競売等実施状況

(2016年5月号掲載)
(松本 恭治)