新マンション事情

100.東京の勝ち組、負け組地域の正体/勝って兜の緒を締めず

 転出・転入などで地区外移動する年齢は基本的に10代後半から39歳までの若い世代である。進学・就職・結婚・住宅購入等で移転する。筆者のこれまでの研究結果では14歳以下の子供がいる世帯は移転しても自市区内の近隣移動が多く、市区県外移動する場合、さらに遠隔移動するほど14歳以下の子育て世代が少ない。全国の都道府県別転入転出人口は少子化の影響から年々低下傾向にあるが、東京都は全体として低下傾向は小さい。転入転出の差が転入超過であれば若い世代が溜まり、転出超過であれば高齢世帯が溜まる。東京都を地域別に見ると多摩市部は若い世代の転入が減少し、中心区はむしろ多くなる。2013年の転入超過幅は多摩市部では殆どなく、都心10区と中間区+周辺区はほぼ同じ量だから、転入人員格差を考慮すれば、都心区は中間+周辺区の約2倍の転入超過率となる。
 団地再生が国の方針になり、ここ数年、東京都の隣接県と多摩地区では団地再生に取り組む自治体が多数現れている。住宅ストックの「古・遠・狭・階段アクセス住宅」で中古価格の値下がりが激しく、さらに高齢化が進むことから団地の衰退に歯止めをかけるのが目的だ。解決策として多世代居住を目標にあげている。子育て世代を団地に積極的に誘導しようと言うものだが、いずれも達成手段が不明だ。残念ながら外部からの転入者が減じつつある状況は、全く絵に描いた餅となる恐れが強い。実態把握と予測が重要である。一方、中心区においては転入者の増加が持続し若い世代が急増した。理由は、各区とも区内に占める商業地面積率が高く、さらに湾岸に面した区では工場移転跡地も多数発生する。法定容積率が高いところを更に緩和する場合が多いから、空中に大量の宅地造成するようなものだ。東京の1極集中が指摘されて久しいが、実は中心区の1極集中である。但し未婚、晩婚の単身者の、転入が激しく、さらに生涯未婚者、子供を産まない共働き世帯も多い。合計特殊出生率は何れの中心区も低いが、大量の転入者で出生の絶対数が上昇した。保育所の待機児童問題、学校の教室不足問題を惹き起こしている。巨大開発が多いから地区によっては深刻だ。都心区は交通利便でも高層住宅群の子育て環境は悪い。エレベーターを降りたら直ぐ公道で不特定多数の通行者が多い。借家や単身者の転入間も無い人が多く、自治会・町内会には多くは無関心である。建物単位、居住階単位で人間関係は分断されるから、無縁、匿名社会化が進行しやすい。社会的孤立は高齢者だけでなく、子育て中の母親にも多い。虐待事件の多くは近隣と没交渉の結果である。さらに、都心区は住宅の小規模化と単身化がスパイラルとなって進行中である。昔は犯罪者はドヤ街に身を隠せば警察につかまりにくいと言われたが、近年ではマンションに住めば良い。防犯、防災の課題も多い。高層住宅が多いから、将来更新出来ないし、水準アップも困難になる。
 ところで、社会移動の対極が東京の都心区と多摩地区で浮き彫りになるが、勝ち組をいつまで持続できるかが問題である。人口予測からすれば勝ち組の破綻は時間の問題だ。都市はゆっくり変化することが住民の福祉に寄与することは言うまでもない。(つづく)




(2016年6月号掲載)
(松本 恭治)