新マンション事情

101.東京都心区の崩壊予測/子育て放棄の高層住宅街顛末

 図は東京都豊島区の年齢別人口構成の2010年の実数値と2040年の予測値である。人口のピークは25〜29歳から55〜59歳に移動している。2010年の30〜39歳人口を100とすると2040年の同年齢帯の人口指数が42.2、2015年を100としたら、同年齢の人口指数は35.5だから若者がごっそり欠損し、中高年が溢れる区になる。単一の区だけなら驚くに値しないが、この数値に密着して、渋谷、杉並、中野、中央区等多数の区が続く。豊島区より高齢化が進む区もある。企業の社員年齢構成だったら、間違いなく斜陽企業で、倒産がささやかれても仕方がない。欠損した若年層を郊外から通勤させる方法もあるが、その郊外も若手不足になるのだから、補填が可能か否かは不確かだ。昼間、夜間を含め、どんな社会になるかをこれまでの経験から推定すれば、(1)地震等の大災害が生じた場合、地震直後の自助、共助、公助の内、自助、共助は頼りない。復興も若者がいない都市ではより困難になる。中高年者ばかりでは壊れた住宅の再建は難しい。高い地価が持続するなら、居住者をごっそり入れ換えるのも再生かも知れない。(2)平常時は、コミュニティー形成の中核になり易い子育て世代の欠損+未婚・晩婚+生涯未婚+離婚+単身世帯の増加で、無縁社会、匿名社会化を促進しやすい。既に多くは既成事実だ。(3)中小企業は慢性的に人手不足になりやすい。これで地域の産業が果たして活気を持続できるか心配である。(4)若年単身者が欠損しても、中高年単身者が増えるのだから、住宅数は過不足なく移行するだろうか。たとえ人口は横滑りしても、結婚、子育て、離婚、世帯分離、死別、転出、転入を経過しての結果である。長期単身居住者に限定しても同じ住宅に住み続ける訳でない。結婚し、子育てし、配偶者と死別した単身者なら、家族向け住宅に多く住む。若者用のワンルームが大量に空き家化する一方、中高年用家族向け住宅、高齢単身用住宅が不足することが予想される。いずれにせよマンション市場は縮小する。
 ところで、驚異的人口変動が生じる大きな理由は、全ての都道府県で1975年から2013年に至るまでに、62.2%に社会移動量が大きく落ちこんだことによる。一方、人口は11194万人から12730万人に増えたから、一人当たり移動回数は54.7%に低下したことになる。低下し続ける理由は、(1)高齢化で中高年齢層が多くなり、それぞれの現在地が人生の終着駅化すること、(2)地方県でも、長く少子化が続いたから、もはや東京に若者を送り出す余裕が無くなっていること。人口減少県は尚更である、一方(3)東京では生まれ育つ子供が大幅に減じた上、上京する若者が減るのだからダブルパンチである。結婚・出産する年齢層が大きく欠損した上に未婚・晩婚・離婚が加わる。
 尚、豊島区他多くの中心区は2010年時点では都内では最も多くの若者を集めながら、2040年では最も多くの若者を欠損させる自治体になる。これは全国の都道府県の中での東京都の位置付けも同じである。これほど急激な変化では、多くの人々が問題に気付いた時点で、対策は手遅れになる。より緩やかな変化こそが住民の福祉に寄与する。(つづく)




(2016年7月号掲載)
(松本 恭治)