新マンション事情

102.地方の工業県と非工業県の違い/経済優先の工業県でマンション崩壊が起きる訳

 図を見れば、東京都の所得が全国の中でダントツの高さだから、全国から若者が集まるのは当然だ。東京都の一人勝ち問題を避けて地方の活性化を論じるのは不十分だが、地方も一枚岩でない。工業県と非工業県に分けると県民所得差が大きいのが分かる。
 工業県の所得は大都市圏内県(千葉、神奈川、埼玉、愛知、兵庫、京都府、大阪府、福岡、宮城)と大きく変わらない。地方は疲弊していると国会議員がしばしば主張するが、駅前の商店街が疲弊して居ても、それが県全体を代弁しているとは限らない。
 工業県は小規模都市分散型が多く、地形とも関係するが、過疎人口が少ない。中部・北関東県が多く、東京、愛知、近畿大都市圏から近い。工業県はマイカー保有率が高い。マイカー通勤を前提として工場が市街地から離れた田畑、山林に立地し易い。小さな町村も競って工場誘致に励むから、大都市は育ちにくい。市街地がまばらに拡散しやすい。
 中心商業地の衰退、公共交通機関の衰退が激しい。群馬県ではバス交通は壊滅的だ。さらに工場が外国に移転もしくは撤退すると、工場の進出を当てにした住宅地や、商業施設が不安定化しやすい。変化が激しいから中心商業地にあってもマンションが不人気化し、特にマイカー社会に対応できない古い駐車場無しの分譲マンションは空き家化・スラム化が激しい。
 一方、新築分譲マンションは機械式駐車場の設置率が高く、言わば時限爆弾つきだ。大型空き店舗、倒産病院、倒産ホテルが珍しくない。工場建設を契機とした分散型市街地が形成されたから、莫大な後追い公共投資も十分機能せず、不良ストックを形成しやすい。開発自由は様々な生活不自由を生みだす。マイカー社会では訪問介護のサービスが低下し、交通弱者は通院、買い物・通学がより困難になる。自然破壊も進む。コンパクトシテイーの掛け声はあるが。経済的魔力に行政も住民も勝てない。目先の利益を追求し、都市像がない。都市計画は名ばかりだ。
 非工業県は県庁一極集中が多く、過疎人口が多い。所得が低いから大都市圏への出稼ぎや移転が多く、女性人数が男性人数を上回る。離婚も多い。九州、東北、四国、北海道は大都市圏から遠隔地で九州、東北、四国、北海道は大型重量物資の陸送は不利が多い。積雪地域は尚更である。
 合計特殊出生率は平成14年のベスト7位以内に沖縄九州で6県が入る。出生率の高さは地域社会の高い安定性に依るとの報告があるが、定かではない。若者の県外転出で県民の高齢者割合が高く、介護・福祉の従業者の割合が高い。
 ところで九州の非工業県は他区域の工業県に比べて県庁所在市の人口規模が大きい。内、長崎市、熊本市、鹿児島市には路面電車があり、福岡市には地下鉄が走る。少なくても工業県の県庁所在市より求心力は強く、県庁所在市に集中する分譲マンションの管理は工業県より安定している。コンパクトシテイーの街づくりの可能性は工業県より高い。
 雄大な自然も良いが、既存市街地に残る歴史の痕跡を示すことが出来るなら、観光とコンパクトシティーづくりは両立するはずだ。地方創生では地域の特色を捉えることが不可欠である。(つづく)




(2016年8月号掲載)
(松本 恭治)