新マンション事情

103.郊外の中古マンションの低価格化の市場構造/都心の容積緩和とも連動

 図は以下の傾向を示す。距離帯別全住宅の平均住宅規模は都心より遠隔地に行くほど大きくなる。遠隔地では借家が少なくなり、持家戸建住宅の占める割合が高まるからだ。平均世帯人数も遠隔地ほど大きくなる。一方、持家共同住宅の規模は立地で大きく変化しない。そこで持家共同住宅は近距離帯で平均住宅規模を超え、遠隔地では以下になり、さらに乖離幅が拡大する。ただし、バブル経済の時は都心から1時間以内で住宅を購入するには多額の費用が必要であった。郊外住宅は管理開始時期より値上がりし、当初入居者より中古取得者の方が高所得になる場合さえ生じた。郊外団地には活気があふれたのである。
 ところがバブル経済崩壊後郊外分譲団地は不人気化し、中古価格は下落した。最近は1戸200万円以下の住宅さえ現れている。低所得者にとっては有難い。都心からの買い手が消えただけでなく、新築マンション建設は、都心Uターンの傾向を強めた。それを可能にしたのは(1)商業区域面積率が大きい区が都心区に多いこと、元々法定容積率が高い上、再開発事業で容易に容積緩和が得やすくなったこと、それによって床面積当たりの地価の負担が軽減されたこと、(2)高層化と共に気密性が増し、窓を閉めれば商業地の喧騒が気にならなくなったこと、(3)湾岸区の工場跡地に次々超高層住宅が建設されたこと、(4)自動車の排ガス規制が功を奏し、都心の外気の汚染状態が改善されたこと等である。
 都心への人口集中によって超高層は値下がり知らずの状態が続いたが、その事実がさらに超高層人気に拍車をかけた。新築分譲マンションの動向だけを見ていると、東京の郊外住民は特別区に強力に吸引されているかに見えるが、実は郊外の戸建て建設がその効果を相殺している。(1)郊外で高層化しても商業地区面積は小さいから、分譲マンション供給には限界がある。(2)徒歩圏外が不人気化したのは分譲マンションで、日当たり、緑、床面積、接地重視の戸建て住宅は相変わらず建てられている。(3)地価の低下で新築の戸建て住宅は床面積を増した。結果、都心派の狭い共同住宅と交通不便な郊外派の広い戸建て住宅に選択が2極分解した。(4)特別区と周辺区域との転出入超過人数は思いのほか小さいのである。
 2極分解によって郊外の全住宅平均規模はさらに拡大する。初期の分譲マンションは相対的低水準化が進むし、さらにエレベーター無しでは、住宅市場での魅力を一層失う。残るは老人世帯、入いるも老人世帯に特化する団地も現れる。人口減少が本格化すれば、空き家化も進み、郊外団地の維持は困難になる。水準アップと小規模住宅活用は緊急の課題だ。
 都心区が郊外都市より問題がない訳ではない。単棟の高層マンションはエレベーターを降りたら直ぐ公道で、子育て環境は劣る。結果、都心区は晩婚者、生涯未婚者が多く、出生率が低く、無縁、匿名社会化した。防犯や災害時の対応に不安が大きい。今は若者が集中居住する街だが、2040年の人口予測ではその若者が大きく欠損する。都心区も郊外都市も問題地区化する理由は、住宅供給を市場原理に委ねるばかりで、成長のコントロールや社会計画が全くないことに依っている。言わば出来ちゃった都市なのだ。(つづく)




(2016年9月号掲載)
(松本 恭治)