新マンション事情

104.極端から極端な人口構成に駆け急ぐ住宅群/居住者像が見えないコミュニティ論が多いが

 グラフは全国の住宅種別の2時点の家計の中心的負担者の年齢分布であるが、以下傾向を記述すると1978年では39歳以下では民営借家がトップで次いで、UR・公社賃貸住宅、給与住宅で6割前後を占める、さらに公営借家、持家の順であるが、持家でも3割に至るから、社会全体が若かったようだ。
 65歳以上比率は何れも少なく、特にUR公社、給与住宅では出会うのが困難な位だった。これが2013年になると、65歳以上が増え、トップは持家長屋、公営借家で、次いで持家戸建て、UR・公社住宅の順になる。いずれも4割を超える。 UR・公社住宅、公営住宅は最も若い社会から最も高齢な社会に駆け込んだことになる。何れも39歳以下の割合は激減している。理由は(1)よく言えば居住が安定している。特に持家は取得した段階で終着駅となる可能性が高い。(2)一般に45歳を過ぎたあたりから世帯人数が縮小するから、狭小ストックが多い公共住宅でも住宅困窮感は緩和される。(3)長く住み続けた世帯は住めば都に地域への愛着と人間関係が増す。(4)公共住宅は居住団地が建て替えを計画しても管理者から一定の配慮を得られる見通しがあり、民営借家に比べ将来に不安が少ない。(5)公共住宅では定住組の割合が増すに連れて、新規募集可能な空き家が少なくなり、若者の転入が困難化した。(6)さらに大規模団地は一般的に最寄駅からバス便が多く、共働き指向の若年層からは人気を失った。緑と遊び場、芝生より、最寄駅に近いこと、エレベータが在ることの方が選別の決め手に変化した。立地に依っては不人気化で空き家が増した。
 ストックの有効活用が出来ない理由は(1)家族人数に合わせた住み替え制度がないこと、(2)民営賃貸住宅を含めて国民の公平負担を図る家賃補助制度もないこと、(3)応能応益家賃制度がないから、大規模住宅を供給したら、家族人数と規模と家賃負担等のミスマッチが表面化する恐れが強い。公共住宅の行き詰まりを受けて政府は今後全面的に縮小・廃止を検討する可能性は高い。既に一部は既成事実化しつつある。そうなれば持家共同の低価格住宅が公共住宅の代替になる可能性は高い。
 ところで、世帯の年齢構成が大きく変化したのだから、地域の人間関係は大きく変質したはずだ。1988年当時、公共住宅団地に行けば、庭には子供たちが溢れて居た。今より共働き世帯が少なかったから、集会所は各種サークル活動が盛んに行われていた。ところが、久々に同じ団地に行くと、子供の姿がさっぱり見えない。共働きが増えたから、家庭の主婦もいない。祭りにはアルバイトを雇わないと神輿を担げない。子供会がなくなったところでは、祭りも廃止だ。コミュニティ活動が不要になった訳ではない。従来と異なる場面で必要性は増す。
 老人ばかりになったら、防災の不安が増す。平常時は高齢者の見守りや、孤独死防止の必要性を増すが、自助、共助の力の衰えが不安を拡大している。図の内訳は国レベルの住宅種別の平均値に過ぎない。地域や住宅の新旧で数値に大きな開きが出る。団地居住の世帯主の75%以上が定年退職者であっても驚くに値しない。近年、居住者像を把握しないままでコミュニティ論が展開されている気がするが、思い込みだろうか。(つづく)




(2016年10月号掲載)
(松本 恭治)