新マンション事情

107.公共借家の行き詰まりが意味するところ/団地丸ごと福祉住宅化か

 図は2013年時点での調査結果で各建設時期別の着工統計ではない。木造民営借家住宅の場合古い時期の住宅ほど持家木造戸建て、持家木造長屋、木造給与住宅から転じた住宅が含まれる。従って古い住宅ほど平均住宅面積が拡大する傾向にある。さらに設備や規模水準の低い木造民営借家から頻繁に建て替えが行われて来たことも古い住宅の規模拡大原因の一部になろう。非木造民営借家も同じように同様の転換があったと思われるが、戸建てや長屋からは少なく、持家共同住宅からの転換が多いと思われる。民営借家の平均床面積が古い住宅で民営木造借家に近く、近年では非木造借家に近づくのは、木造借家が滅失傾向にあり、非木造借家が急増したことによる。単身居住が多いから住宅規模水準は低い。
 公営借家とUR・公社住宅は民営化は殆どなく、設備、規模水準が低くかつ、老朽化が進んだ住宅が順次建て替えられた。公営借家は2戸建てや簡易耐火の低層住宅から中層に、UR公社は低中層から高層に建て替えられた場合が多い。この2つの住宅は1991〜2000年を最高に水準向上を果たしたが、以降かなりの勢いで低下する。最近の規模は民営借家なみである。理由は公共住宅建設が縮小し、建て替えか市街地再開発事業に特化したことが大きい。建て替えでは戻り入居する人々は単身高齢者が多い。戻り入居者は新築家賃でなく従前住宅の家賃を保障するから住宅規模を縮小せざるを得ない。UR団地では敷地の一部を民間に売却する場合も多く、結果的に建て替え団地の戻り入居率を高めて居る。これは東京都内の都営団地を建て替える場合も適用される。既存団地の土地の一部を民間に譲渡し建て替え費用を捻出、超高層を建てる場合が多い。住宅面積は極限まで切り詰めるのだからどう見ても変だ。超高層住宅で開口部が1面しか確保できない場合は、奥行きのある住宅は行燈部屋が生まれやすいが、小規模住宅なら採光上困らない。中廊下式か、空洞の周りに住宅を配置するロの字型住棟であれば、耐震、耐風構造になる。空洞に面した側は廊下で採光面は不要となるから、壁と鉄扉が並ぶ。まるで老人収容倉庫だが、果たしてこれが優良な公共資産か疑わしい。ともかく単身しか住んでいない老朽住宅群を建て替えると低水準住宅の再生産になるのだから、将来に渡って家族世帯が住めない団地になる。
 高層住宅は耐震補強で延命するが、居住世帯の高齢化単身化の進行を阻止できない。なお、老朽、低水準住宅であっても全て建て替えられる訳でない。立地に依っては集団移転を促し、空き家が多い住宅棟を取り壊すことが計画されている。
 ところで、高齢単身化した老朽分譲マンションの建て替えでは、今後3LDK居住者でも建て替え後は1DKでも可とする場合が増える。余剰床面積が増えるほど、建て替え資金に余裕が出来る。但し机の上での推測にすぎない。地方都市では所有者の大半は不在、空き家以外は借家人と言う分譲マンションが多数あるが、建て替えも、維持管理も、管理組合解散も話し合うことが出来ない。勿論行政は民事不介入だ。経済価値がなければ競売・差押えも起きない。不良住宅地区改良法があるが、まだ適用事例がない。(つづく)




(2017年1月号掲載)
(松本 恭治)