新マンション事情

114.違法増築自由の集合体―優良ストックそれとも不良ストック?

 写真は個人に大小・新旧自由の増築集合体の団地事例である。昭和31年10月旧住宅公団分譲、戸当たり敷地は38坪、内占有敷地は20坪。10棟。分譲時の床面積は戸当たり16,5坪、70戸、2階建てテラスハウス型分譲、管理組合はない。中央に公園を持ち、近所の子供の数少ない遊び場になっている。西東京市に立地し、周りは閑静な住宅地で最寄り駅までは徒歩8分程度。各自が自由に大がかりな増築(北側、南側、屋上)をした。増築面積の合計が元の面積を超える場合が多い。共有の屋根、外壁が屋内化したから、共同修繕する必要がなくなった。景観は悪いが、狭さは多くの住宅で解決した。近年の増築ほどデザイン、工法。建築 材料の使用が本格的だ。最近の中古取引では同団地内では1戸300万円があった。買うには勇気がいる。但し借家の借り手はいる。1戸7万5千円の賃貸広告が出ていたが、同規模の周辺借家より安い。安い理由は築年数が古く、使いにくいのか、無法建築の集合体が原因か否かは分からない。空き家は70戸中7戸と少ないが、内3戸は増築をしていない。外壁が剥がれた部分から中の鉄骨・鉄筋が見えるが、かなり腐食が進んでいる。境界壁が共有だから、取り壊しが出来ない。増築部分の建築確認は無いから、固定資産税が低い。首都圏では公社もテラス型を供給した。昭和30〜35年に建設された団地数は東京都と隣接3県で高々20カ所に過ぎない。増築禁止でかつ傾斜屋根の阿佐ヶ谷団地では、長く建て替え運動を経た後合意決着を得た。一方増築し放題の多くの団地では建て替えの話すら起きない。どちらの選択が正しかったか分からない。総じて近隣関係は良い。駐車場は共有地が広くても、団地内では台数を制限し、月1台5千円を徴収するが、外部の駐車場利用者には料金差額を補填する。自治会費は1世帯月千円を徴収するが、駐車場会計の残金が加わる。夏のビアパーテイー、年末の餅つき大会、街灯の電気代と道路と排水溝の清掃・補修費、集会所、遊び場遊具の修理費にあてる。餅つき大会は団地外の子どもも参加する。自治会役員は1棟から1人半年交代だ。借家人も担当する。
 庭が広いから、緑は多い。増築しても南側の軒線を揃え、隣戸とのトラブルはない。これほど堂々とした増築を見たことが無い。安普請の増築がある一方で、隣家と共同で本格的増築をし、デザイン統一している住戸群もある。ともかく全体は不揃いだが、狭小住宅ではない。風呂や便所の拡幅、台所の設備更新や内装一新は大いにありそうだが、各自の判断で行うのだから、実態は不明だ。老夫婦や高齢単身化世帯では使わない部屋もあろう。団地住民共通の未来像の議論はなく、所有者達は現状追認を続けるしかない。もちろん差し迫った危険が露見しても、管理組合無しだから、建て替えも解散も決議できない。内部化した隣戸との境の構造壁の劣化が心配だが、増築部分の建て替えなら個人でも可能で、現に行っている。構造補強も可能だ。団地全体で大きな方向転換が出来ない代わりに、住宅の増築部分を個々に再生出来れば、100年以上存続も夢でない。借家世帯が半分弱居るため子育て世代が多い。なんとも不思議な団地である。



テラスハウスの庭と屋上へ本格的増築がなされた。
緑豊かだが、個別庭と建物は各自で管理。ブロック塀はない。

(2017年8月号掲載)
(松本 恭治)