新マンション事情

117.公共住宅の崩壊―勝ち組マンションもいつかは崩壊に。その時政府は助けない


 東京都における建築時期住宅種別戸当たり面積m22013年 住宅土地統計調査結果の再集計より作成

 

 図を見るとUR・公社借家、公営借家、社宅は近年になるほど戸当たり床面積の縮小が激しい。給与住宅が単身向けに変貌したのは民間企業の経営戦略の変更だから仕方がないとしても、公共住宅の変貌は借家政策の縮小撤退方針による。空き家が増えているのだから、もはや公共住宅はいらない言うものだが、実際は水準の低い借家と、高齢者が保有する「売らない・貸さない」住宅の空き家が増えているだけで、都営住宅の空き家募集には30倍を超える申し込みすらあるのだ。UR・公社の空き家も増えているが、これは家賃が高く払いきれない世帯が民間借家に流れていることによる。建て替え団地の場合、従前から住んでいた世帯は戻り居住した場合は建て替え団地の家賃の半額を支払えば良いが、その世帯が退去した後の入居者は全額を払わなければならない。緑が多く、隣棟間隔が十分あり、いくら子育てに適した外部空間でも、家賃負担に耐えられない人々は低水準の安価な家賃民間借家に避難居住せざるを得ない。都営にもUR・公社にも給与住宅にも入れない若者の民営借家住まいが増加しているが、一方で少子化の影響で空き家が増えているのだから、民営借家の供給過剰と重なり問題を複雑化させている。ところで公共住宅の戸当たり床面積が縮小傾向に陥っている理由は、国は老朽住宅の建て替えを認めても、土地を購入し新規開発するのを抑制した結果である。建て替え対象団地は住宅の水準が低かったから、高齢単身者が多く居住する。その単身者のための住宅だから、当然面積は削られる。つまり小規模住宅の再生産・濃縮になるのだから、将来家族世帯が住めない不良ストック予備軍を形成することになる。極め付きは都営住宅の超高層化である。さすが多摩地区ではないと思うが、4〜5年前の時点で都内には12本近くの30階以上住宅が建てられていた。敷地の半分を民間に売って建て替えるものだが、戻り入居者は高齢単身者ばかりだ。修繕費・管理費は出せるのかと企画者に聞いたら、自分はその任にないとの答えだ。多分管理委託先の供給公社に聞けば、企画の責任は自分たちにないと答えるはずだ。超高層は2面採光にすると風や地震対策から南北に長い広い住宅が必要となるが、1DKなど小規模住宅なら1面採光で済み、住棟形状も搭状、中廊下型、階段エレベーターを核とするコア型、ロの字の内側廊下囲み型など自由だ。廊下側には窓が無いのだから良く言えばホテル仕様、悪く言えば老人倉庫群である。ホテルなら密室化も良いが、高齢単身者住宅の密室化は孤独死を誘発しそうで恐ろしい。
 公共住宅が日本の住文化を先導してきた輝かしい歴史があったが、今や矛盾の塊となりつつあると考えるのは自分だけではないはずだ。戸数から見れば国民の期待を集めるほどでない。幸い近年の供給戸数は大きく縮小しているため、ストックの水準全体を大きく引き下げている訳ではないが、一方公共の老朽ストックは急速に蓄積する。破綻すれば分譲マンションの適正管理推進にも影響する。分譲マンションから公営住宅に移転できるのは今でもわずかだが、今後はニーズが増えても可能性は一層なくなる。経済破綻しても分譲マンションにしがみつくしかない。ただし、みんなで破綻すれば怖くない。(つづく)


(2017年11月号掲載)
(松本 恭治)