新マンション事情

119.マンションの外部空間の設計とコミュニテイー形成―空間の段階構成

 

 市街地に立つ1棟型のマンションの多くは玄関ホールを出たらすぐ公道で、外部空間は建物沿いに低い植木を配置するくらいが精々だ。ところがある程度の敷地がある場合は、公と私の間に半公共の空間計画することができる。ヨーロッパの市街地建築は高さ制限があり、中庭に入ってから各階段又はエレベーターホールに誘導され、上階の住戸に向かう形が多い。ドイツに行ったときに街中の住宅の中庭を覗いて廻った。ある時「どちらに行きますか」と中年の女性に聞かれ、その時はドイツ人は親切だなと思ったが、後で長くドイツに滞在した人から、「警戒されたのだよ」と言われた。旧同潤会の江戸川アパートも中庭の公園を取り囲む形で建物が計画されていた。後からの調査で知ったが中庭を共有することで、多くの居住者はコミュニテイーの一体感を長く有していたようだ。池の鯉を見つめていると、住民から「どちらの家に行きますか」と声を掛けられ、自分を外部の者として女性が認識していることはすぐ理解できた。考えすぎかも知れないが、特段の用が無かったら帰れと言う意味だなと思った。


 ところで、最近のマンションでは巧みに計画された半公共的な空間を発見できる。写真は一方通行の細い道路を挟んだ2棟、計400戸の10階と14階の武蔵野市にある高層分譲マンションだが、足元空間の設計の質の高さに驚いた。まず、玄関・エレベーターホールは4か所に分散するが、公共道路から玄関までは何れも20~30mは確保されており、各住宅へはオートロックのドアを通過しないと入れない。共用の廊下から各住戸の玄関までは奥行きの深いポーチがある。ここまでは良くあるが、自動車や自転車が塀や建物で隔離され、一般の人が通行可能な団地内外からは、一切見えない。1階の各住戸の玄関扉も小さな内部の庭に入らないと見えない。一般の人が立ち入り・通過可能な敷地は広く、芝生、樹木、タイル舗装面、地面のほか、遊具、砂場、ブランコ、浅い池ありで、マンション周辺の子供たちにとっても良い遊び場となっている。もちろん自動車の乗り入れは禁止だから、スケートボード、自転車遊びをしても事故の不安がない。1階に管理事務所、小さなキオスク、ラウンジ、2階に大型キッチン、集会所、宿泊室が並ぶ、駐車場屋上はウッドデッキの遊び場で、上から見ると、子供たちが駆けているのを頻繁に見かける。キオスクが中心にあることで店員は子供の人間関係については詳しい。学校帰りの子供に「もうおねーちゃん家に帰っているよ」と声をかける。ラウンジは、子供たちの利用OKだ。オートロックの玄関に入ると通行人同氏はほとんどが挨拶する。運送業者も例外でない。エレベーターを降りる際に、後ろから「お疲れ様でした」と声をかけられ、慌てて振り向いたら、小学2年生程度の女の子がいた、当方咄嗟に「お疲れーー」と返事したが、「小学生が疲れていたら日本沈没だ」と一人で苦笑いした。このマンション今の中古価格は13年前の販売時より値上がりした。駅前の不動産屋が言うには市内2番目の人気と言うが、2番が本当ぽくって良い。それにしても、デベロッパーと建築設計者の社会的責任は大きい。(つづく)


ラウンジからマンションの北側の庭を臨む

 ラウンジからマンションの北側の庭を臨む。誰が遊んでも良い。
 このラウンジ左側にキオスクがあり、遊び場を監視しやすい。

(2018年1月号掲載)
(松本 恭治)