建て替え

NPO日住協 マンションの再生、建替えを議論−改修による手法、等価交換手法の条件を探る−

NPO日住協は7月6日にカメリアプラザ(東京・亀戸)で、マンションの「再生」あるいは「建替え」をどう考えるか、その条件を探ると題した研修会を開催した。会場には、再生と建替えとの選択を考える15管理組合から30名が参加した。午前10時30分から午後5時までのプログラムは、まず、建替え問題に早々に着手しながら、現在、改善施策を取り入れながらの次世代に向けた住宅全体の維持に取組む国立富士見台住宅団地(国立市)による事例報告にはじまり、昼食を挟んで、旧野毛山住宅団地(横浜市)の建替えに至るまでの経緯、建物劣化状況調査を踏まえての綿密な分析報告が行われ、引き続き、西山博之理事をコーディネーターに、改修による住宅団地の長命化を検討する2管理組合、建替えを模索する2管理組合の代表等とともに、関東学院大学工学部の田辺邦男技師、汎建築研究所の星川晃二郎一級建築士を交えパネルディスカッションが催された。結構、過密気味のスケジュールながら、後半は時間を押したなかで、盛んな議論の展開が随所に見られた。
             (本紙客員編集委員・明海大学不動産学部講師 竹田 智志)



事例報告1
  建替え運動の凍結 組合を超えたコミュニティの創設に向けて 国立富士見台住宅団地


パネラーは、左から高橋立夫氏(国立富士見台)、福間健一郎氏(清瀬旭が丘)、
阿部秀寛氏(多摩諏訪2)、武川光弘氏(若松2)、田辺邦男関東学院大工学部技士、
星川晃二郎一級建築士、本紙大和一真主筆、西山博之理事の順


1990年をバブル経済の終焉の時期と捉えると、その前後を通して首都圏の郊外型、団地型、階段室型マンションを席巻した話題は、建替えへ可能性を探るものであった。国立富士見台住宅団地(国立市・65年入居、298戸)は、その先駆けで87年からほぼ5年にわたって建替えへの取組みが本格化し、現在の法制度からすれば「決議」に至る経過をたどったものの、94年には終止符を打つ。
この経緯について、ここでは触れないが、注目すべきは、この当時の同住宅団地と現在とでは、世帯・世代構成面で隔世の感が否めないという事実である。この点について管理組合は、すでに少子高齢化現象を先取りする団地と捉え、その処方箋をいかにすべきかという観点から、現状の建物をただ維持するという枠組みを超え、社会・環境の変化に対応した団地全体の維持改善策をプラン化するハード面の充実と、現在は主に敷地内の緑化管理を担うボランティアグループのさらなる発展を踏まえ、いわゆる区分所有者の団体を超えたコミュニティの創設を目指したソフト面の拡充を掲げる。
こうした動きは、同住宅に限らず、同時代の多くの住宅団地で対処に迫られている状況ではあるが、決め手となる手法が確立されているわけではなく、対応が待たれている。事例報告というよりはむしろ、今日の課題を語る「基調講演」の趣であった。


4団地代表と識者によるパネルディスカッション 改修による長命化と建替え構想

建替え推進とする住宅団地は、「決議」に向けて詰めの段階にある住宅(多摩諏訪2)とプラン化の過程についた住宅(若松2)から紹介がなされた。また、再生を推進する住宅団地は、いわゆるマンションドクターを活用し、診察医の助言をもとにマンションの長命化を具体化していく方向性を示唆する。
なお、田辺、星川両氏からは、技術面において、改修による長命化は十分に可能であるといった認識が示され、本紙主筆も、旧野毛山住宅団地があくまでもレアなケースであって、本来長命化の道を模索していくべきだとする。
会場からの声としては、建替え計画にあって、管理組合と自治体との関係を尋ねるものや建替決議の効力への問いなど様々な方向からの質問が集中した。
ところで、改修が修繕の範疇にある場合と、再生手法が、例えば壁数枚を残して、ほぼ全体を見直すとしたとき、その決議事項は、4分の3以上となるのか、建替え決議に準じるのか、それとも全員一致かという問題が生じる。また、再生を担う主体は誰なのか。管理組合であるのか、新たな団体であるのか。この辺の法的整備が進んでくると、管理の延長線上に用意された究極の選択肢は幅を持つことにつながる。

事例報告2
  長期修繕計画を持たないマンションの老朽化 その実態と建替え概要 旧野毛山住宅団地

旧野毛山住宅団地(横浜市・56年入居、120戸)における高経年の実態については、星川晃二郎一級建築士が同住宅の建物・設備面について詳細に説明。また、田辺邦男関東学院大工学部技師が建替えに至るまでの経緯、状況等について具体に紹介した。さらに、本紙大和一真主筆が、同住宅建替え委員会での経験を披露した。
同住宅は、板状型住棟、塔状型住棟併せて5棟で構成され、入居当初から一般分譲、社宅としての分譲が行われ、確立された維持管理体制というものが存在していない。対処療法的な修繕が行われてきているものの、建替え前の状況は、ほぼ半数以上に当たる住戸が空き家の状態であった。
建物の劣化の状況は、ほぼ何もしないまま半世紀を経て、コンクリート躯体にまで及ぶ中性化が進んでいた。
これまでの老朽化による建替え実例住宅を見てみると、(1)80%以上のコンセンサスを得るためには、従前の居住者は費用負担を伴わない、あるいは相当程度軽減される見通しがあり、(2)余剰の容積が多く、(3)入居当初と比べ、利便性が高く、住宅規模が大きくないといったところがコンセプトで、しかも、計画的な修繕が進められてきた形跡のあるところでの実例は皆無に等しい。同住宅は正にこの一例である。
なお、同住宅団地の詳細な調査報告書(A4判77頁)は、NPO日住協で販売。定価1000円(税込)、送料210円。お申込みは、電話(03F5256F1241)で同協議会へ。

(集合住宅管理新聞「アメニティ」2008年8月号掲載)