建て替え

多摩NT諏訪2丁目 コミュニティの再構築に向け力コブ!!−わが国最大規模を誇る建替えが本格稼働−

 わが国最大の分譲マンションの建替えが、多摩NT諏訪2丁目住宅団地(多摩市・71年入居、640戸)で始まった。管理組合は7月23日に旧建物への感謝を込め大感謝祭を開催。その後すぐに旧建物の解体着工に取りかかった。本号では来月1日、東京・亀戸のカメリアプラザで開催されるNPO日住協による「建て替え報告会」を前に同住宅団地の建替えまでの全容とはいかないまでも、約40年間積み重ねてきた住民を主体とする活動を踏まえ、これまでの軌跡について明らかにしたい。
             (本紙客員編集委員・明海大学不動産学部兼任講師 竹田 智志)




感謝祭当日に行われたシンポでは、コミュニティの
構築がすでに話題に

 近時の150例を超えるとされる建替え実例というのは、80年代に席捲したモータリゼーションや、それ以前に課題化した計画修繕等への対応なしに、棚牡丹式に建替えに至ったというケースが意外に多い。
 この点、同住宅団地における取組みは、両者に対し極めて真摯であり、そもそも内在する区分所有の本質から建替えが醸成されてきたことを窺わせる。そして、建替え組合は今、建替え実現の困難極まりないプロセスを超えて、新住宅の巨大化に伴う新たなコミュニティの構築≠ノ射程を延ばし、既に展開を試みている。
 そもそも同住宅団地は、いわゆる自主管理と云われる団地管理の先駆けであった。これは区分所有者が中心となって諸課題に取り組んできたことであり、管理会社任せにしない管理の伝統を築き上げてきたことを意味する。そしてそれはやがて、コミュニティの結束力を次第に強化せしめた。そこで現在、同組合は、640戸から1249戸に膨れ上がろうとする住宅団地として今後、どう対応していくべきかといった点をクローズアップし、グローバルな対応を担おうとしている。

多摩NT諏訪2丁目住宅メモ・背景

 京王相模線、小田急多摩線「永山」駅から東方に立地し徒歩10分圏内。駅に近い住宅ながら多摩丘陵の一角にあって起伏のある地形が特色。この起伏を克服するために同住宅と鎌倉街道にエスカレータを導入することや、ビルのEVを利用し渡り廊下で接続するなど様々なアイデアが披露されたとしている。また、建替えへの取組みは当初、居住空間の狭さからの脱却を指示することが多かったものの、徐々に設備やバリアフリー化を求める声が増加したとしている。なお、同住宅は、NT内の最初の入居住宅で高齢化率も相当高い。2000年の人口は約1400人、高齢化率11.5%を占め、更に拡大の傾向。


 同住宅団地の建替え検討の経過を振り返ってみよう。検討当初の建替えに寄せる住民の声というのは「高齢化社会を迎えて、安心して住める住まいが欲しい。手摺もなく狭い階段や、玄関、お風呂場の狭さは高齢者、障害者にとって不安が一杯」、「子供も成長して今の住居では狭すぎる。もっと広い部屋が欲しい」、「耐震性のある安全な建物に住みたい」、「両親も子供も一緒に住める2世帯、3世帯同居できる部屋ができるといい」、「建物修繕では追いつかないほど老朽化が進んでいて、外壁コンクリートの落下等危険が絶えない」、「今後に予定される予算約8億円の大規模修繕の費用のうち約5億円が不足。1戸当たり約80万円の不足が生じる。建替えを推進した方が負担が少なくて済むのではないか」、「この団地は緑も多く、駅からも近くて便利なのに狭くて古いため資産価値が下がっている。良い環境を残しながら子供に残せる住まいにしたいと思う」というものだった(筆者:88〜06年現地調査)。
 次に、組合の検討過程について見てみると、まずは98年頃まではというと、区分所有者の負担をなるべく抑えて建替えを実現しようとするものである。等価交換方式を活用して同住宅団地の住戸数を増大させるというものであった。99年にようやく提示されたプランは、それとは異質で「既存建物ゾーン」、「建替えゾーン」、「資金調達ゾーン」の3つのゾーンに分け各区分所有者がそのいずれかを選択するという方式の採用であった。83年法における法62条による「建替え決議」を実現するというよりも、区分所有者全員のコンセンサスを重視し建替えの実現を求めていく考え方を提示した。次のプランは、法70条を基調とし、敷地の売却を含む計画となっていた。合意形成と資金負担の一体不可分の関係の中での正に紆余曲折の計画案である。
 しかも難題はこれだけではない。それは、同住宅団地が、いわゆるニュータウンに位置するために新住宅市街地開発法、都市計画法、建築基準法等建築公法による規制を、もろに受ける法構造に直面。これは、二重三重の容積規制を受けざるを得ないということを意味し、同住宅団地を建替えのためだけに単独で敷地の利用を変更するわけにいかないことを示した。

【建替えまでの全軌道】

1985(昭和60) 駐車場増設
1988 集会所増築 建替え検討準備委員会発足
1989 建替え検討委員会発足
1991 住宅建替え推進決議委員会設置
1992 建替え問題・遊具修理行政交渉
1994 建替えコンサルタント(A)導入
1995 第2次建替え検討案・等価交換・住民説明会第3次建替え検討案作成・住民説明会実施
1996 住宅建替え決議5.26総会
1997 建替え会計新設
1998 建替えコンサルタント(B)導入 建替え基本構想・対行政交渉
2000 建替え(ゾーニング案)推進決議
2001 建替えディベロッパー選定作業
2003 住み続けるための住民アンケート(建替え希望70%、自己負担容認70%)耐震予備診断、本診断実施(計16棟)
2004 建替え推進決議特別決議 C社にコンサルタント委託
2007 建替え基本構想案(第3次)決議 事業協力者:東京建物 設計:松田平田設計 コンサル:シティコンサルタンツ
2010 建替え決議 92%の承認


 そこで90年に多摩市に対し優良建築物等整備事業補助金の申請を行い、建替え前の調査研究費として年額2000万円3カ年分の給付を受けた。91年には「一団地の住宅施設」の見直しの要請、98年になって東京都は「多摩ニュータウンにおける集合住宅の建替えに関わる指針」を策定し施行した。管理組合は、このような助成と規制の緩和を受け事業協力候補の最終的な選定を行い、2007年度には住民総会に諮り事業協力者として東京建物(本社:東京都中央区、畑中誠社長)を決定するに至る。
 こういった私法、公法領域の困難さへの対処は、人的領域を含めると、もはや記事の領域を超える。コミュニティの再構築は、同住宅団地の建替えの領域から、昨今では震災対応、高齢化社会への対応等を含んだまちづくり≠印象付けるものとして映ってくる。これまでのプロセスからすると、これらをもクリア―とするバイタリティと同時に、イノベーションの期待も高まる。




(集合住宅管理新聞「アメニティ」2011年9月号掲載)