建て替え

老朽化マンションの再生/「建物敷地売却制度」は今後のマンション再生にどう影響するのか

 今年2月末、「マンション建替え等円滑化法」の改正案が閣議決定され、その概要を先月号でお伝えした。今回は、マンション再生(建替え)に携わってきたデベロッパーを取材し、各社の経験から、同改正法が今後のマンション再生に及ぼす影響と課題についてお伝えする。

「改正マンション建替え等円滑化法」の概要

 同改正法で新たに創設される「建物敷地売却制度」は、「要除却認定」を受けた旧耐震マンションで、「敷地売却決議」を行い、5分の4以上の同意があれば、決議が成立し、売却が可能となる。
 従来のマンション敷地売却は、区分所有法に定めが無いため、民法の規定で全員同意が原則だが、改正法により同意の要件が引き下げられた。
 また、同制度を利用して建物を建替える場合、一定の要件を満たせば、容積率が緩和される。



建物敷地売却制度は活用されるのか

 各社の事例によれば、過去のマンション建替えでは、「建物の老朽化」「エレベーターが無く不便」等が主な建替え理由で、「旧耐震マンションなので危険」という理由は多くない。そのため、旧耐震マンションを要件とする同制度の利用は、今のままでは少ないのではということであった。
 それでも同制度の利用が考えられるのは、
・ワンルームの投資用マンション
・既存不適格のため、建替えても同程度の広さが確保できない場合
・都心の一等地等に建つマンションで、オフィス利用のほうが良い場合など、限定的であった。

容積率緩和が注目を集める

 注目されているのは、「建物敷地売却制度」そのものより、「容積率緩和」のようである。事実、同制度の報道以来、あるデベロッパーには、管理組合から「容積率緩和」に関する問い合わせが相次いだそうだ。
 過去に、管理組合がマンション再生を議論する中で、最終的に結論が建替えに至ったのは、余剰容積率により還元率が高くなり、自己負担が少なくなったケースである。
 そのため、今現在は余剰容積率が無くても、一定の要件を満たせば、緩和されるという制度は、関心を集めるだろう。
 しかし取材の中で、注意点も指摘された。仮に容積率の緩和が認められても、容積率を使いきれないケースも出てくるということだ。「日影規制」など、別の規制がある場合もあるからだ。
 緩和された容積率を最大限使ってマンションを建築しようとしても、日影規制に抵触すれば、当然建物の大きさや形状等に影響が出てくる。
 現在、国交省から発表されている法案には、容積率の緩和を認める要件や他の規制との調整があるのか等、細かな点は発表されていない。法案が成立すれば、細部も決まってくるため、内容がわかり次第お伝えしたい。


マンション再生の主役は管理組合

 各社の取材に共通していたことが、日頃からの管理組合活動がマンション再生の議論に与える影響である。
 日頃から管理組合の活動が活発なマンションでは、議論をできる土壌ができているため、マンション再生の議論が進み易いということであった。
 次に「修繕積立金」が積み立てられている管理組合は、議論が進みやすい。再生の選択が「改修」であれ「建替え」であれ、元手に余裕があれば選択肢も広がるからである。
 以上2点は、一見当たり前のことだが、できていないと議論が先に進まず、いたずらに時間が過ぎ、老朽化がさらに進むという悪循環に陥る。
 マンションの行く末を決めるのは管理組合で、デベロッパーではないのである。
 ただし、マンション再生の議論を進める中で、行政との折衝等、専門的な知識も必要なため、管理組合の使い勝手のいいデベロッパーやコンサルタントへご相談くださいということであった。

団地の再生策はこれから

 さて、同制度は旧耐震マンションが要件という制約はあるが、これでマンション再生の手法が、「改修」「建替え」「敷地売却(区分所有の解消)」と一通り揃った。しかし「敷地売却」に限って言えば、単棟型のマンションを想定した法案で、団地は想定されていない。
 団地については現在国交省で検討中で、時期は不明だがいずれ発表されるということであった。こちらも内容が明らかになり次第、お伝えしたい。

(集合住宅管理新聞「アメニティ」2014年5月号掲載)