5 建物診断

 建物の運用は安全性、衛生性、機能性等について、建築基準法、消防法、ビル管法、労働基準法、水道法等の法律で、幾つかの技術的最低基準を設けています。
 マンションの場合、区分所有者が組合を組織し、これが建物共用部の運営管理を行ないます。定期的な保守、点検の費用は積算し易いのですが、大規模修繕の費用についてはなかなか難しいところがあります。この為に長期修繕計画が必要で、その為には普段からの維持保全と、建物診断が欠かせません。

維持保全・・・竣工当時の機能、性能を保持する

1 維持保全の種類

・安全性、衛生性の確保・・・外壁タイル等の剥落、給水管の赤錆び等対策
・機能性、快適性の確保・・・機械設備、昇降機設備の維持、清掃等
・資産価値の保持、増大・・・社会の技術進歩に遅れないようにする

2 維持保全の方法・・・予防保全の方が耐用年数が長くなる

・事後保全・・・漏水、機器損傷等問題が発生してから処置をする
・予防保全・・・日常、定期点検により劣化状況を把握して、予防措置をする

3 維持保全の効果

・物理的寿命の延長・・・構造体の安全性、機器類の交換時期
・故障率の低減・・・・・設備機器等の良好なる運用
・衛生環境の向上・・・・空気環境、給排水衛生環境

建物診断

1 診断の目的(改修方針、改修目的)

・劣化診断・・・・・・物理的劣化、故障等対応
・安全診断・・・・・・外壁落下防止等、安全性の確保
・耐震診断・・・・・・地震による災害防止
・環境診断・・・・・・室内環境の快適性の向上
・省エネ診断・・・・・省エネルギー等経済効果
・システム機能診断・・建築物の機能向上

2 診断を行なう動機

・予防保全の為
・長期修繕計画の為
・事後保全の為
・建物の機能向上の為

3 診断の手順

 1)予備調査・・・・・設計図書、修繕記録、建物状態、保守・点検記録等調査
 

 2)本調査
  ・1次診断・・・・目視、部分打診
  ・評価・・・・・・2次診断の内容確認
  ・2次診断・・・・目視、打診(部分又は全面)、非破壊、物理調査、
  ・評価・・・・・・3次診断の内容確認
  ・3次診断・・・・目視、破壊調査、抜管、内視鏡調査
 3)診断結果報告書
  ・調査概要・・・・・・・・建物概要、調査目的、調査項目、調査方法
  ・調査結果・・・・・・・・調査結果まとめ、総合所見
  ・劣化・損傷位置図・・・・図面に調査内容記入
  ・調査写真・・・・・・・・調査内容、部位の写真
  ・劣化内容・原因・評価・・劣化の種類、程度、原因
  ・物性試験結果・・・・・・中性化、仕上材引っ張り試験、圧縮強度、その他
  ・設備関係調査・・・・・・内視鏡、抜管考察、
  ・改修案の策定

4)長期修繕計画
 調査項目は「4劣化と寿命」の項目の劣化の種類に対応する。

4 評価

1) 評価の度合い
A:やや劣化は始まっているが、殆ど問題がない(健全)
B:劣化があきらかであるが、まだ健全である(軽度)
C:かなり劣化が進行しており、1~2年の内に問題が発生する(中度)
D:安全上問題が発生しており、早急の修繕が必要である(重度)

■ 評価は部位毎に行なわれ、表現方法が違う場合があります。
長期修繕計画
 上記の建物診断、評価、改修案に則り、改修時期、内容を想定して工事費用を概算し、修繕積立金の計画を行なう。