3 工事の品質管理

建物の品質について

 建物の性能、品質は設計図書に記載されて決まります。施工者はその内容を充分検討して施工しますが、監理者が材質、工法等についてチェックします。その基本になるのが工事共通仕様書(建築、設備、電気)で、内容の一部を特記仕様書で特記しています。又、関係官庁(役所建築課、消防署、水道局、東電)が必要な時期に検査を行い、確認申請書等に照らし合わせて問題が無ければ、検査済証を発行します。

1 仕様書
 建物は設計図書を基に施工されます。設計図書の中に特記仕様書があり、そこには 各工事項目毎に仕様が記載されています。
 例えば、アルミサッシの耐風圧性能、遮音性能、水密性能とか、屋上の防水の性能、 難しいところではコンクリートの強度、セメントの種類、鉄筋の強度、種類、配筋方法等等 建物を建てるのに必要な工事について、使う材料や、工法が記載されています。
 施工者は特記仕様書の記載内容通りに施工し建物を完成する事となります。

工事項目(建築)
1.一般共通事項           
2.仮設工事           
3.土工事          
4.地業工事            
5.鉄筋工事         
6.コンクリート工事        
7.鉄骨工事
8.防水工事
9.組石工事
10.石工事
11.タイル工事
12.木工事
13.屋根工事
14.金属工事
15.左官工事
16.建具工事
17.塗装工事
18.内装工事
19.雑工事
20.外構工事
21.その他工事

工事項目(設備)
1.一般共通事項       
2.共通工事            
3給水設備         
4.給湯設備      
5.排水・通気設備
6.ガス設備
7.空調・換気設備
8.排水処理設備
9.消防設備
10.衛生器具設備
11.昇降設備

工事項目(電気)
1.一般共通事項           
2.共通工事            
3.幹線、動力設備   
4.電灯、コンセント設備
5.受変電設備
6.消防設備
7.避雷針設備
8.その他工事
9.弱電設備(電話、TV、インターホン、有線放送)

2 監理
 建物は規模に応じ規定された資格の建築士により、設計、監理される事となります。設計監理者は、設計図書の通りに施工されるよう指示、助言をし、予定の性能を持った建物が完成するよう、監理します。

住宅の品質確保の促進に関する法律
(鉄筋コンクリート造の共同住宅に関する部分について記す)

 住宅購入者は素人で、住宅の品質について説明を受けてもよく理解できず、実際住んでから問題が発生し気付く事があります。又、問題が発生した時に何処に相談したらよいか、それが瑕疵の場合保証期間が短く無償修繕が出来ない等問題が多く、その為、住宅の性能確保の促進、住宅購入者の利益の保護、住宅に係わる紛争の解決について制定された法律です。
瑕疵担保責任10年の義務付け(アフターサービスの充実)
住宅性能表示基準及び評価方法基準(強制ではない)
住宅紛争処理体制(住宅性能評価が交付された住宅に関する紛争)

● 瑕疵担保責任
 従来1~2年であった瑕疵担保期間を10年に延ばしました。
(構造、雨水の浸入の防止、地盤等10年間保障期間となります)

● 住宅性能表示項目
 住宅の性能について以下のような項目を設け、等級をつけています。
1.構造の安定(地震、風、雪に対する構造躯体の安全性・修復性の程度)
  上記の力に対して、構造計算上の安全性に対する等級
2.火災時の安全性(火災時の避難の容易性、延焼の受けにくさの程度)
  火災報知機の設置、耐火性能、プラン上の避難のしやすさに対する等級
3.構造体の劣化の軽減(構造躯体の劣化対策の程度)
  コンクリートの性能(水セメント比、スランプ、単位水量、)鉄筋のかぶり厚さの規定
4.維持管理への配慮(配管の維持管理への配慮の程度)
  躯体、仕上材に影響を及ぼさずに配管の点検、清掃が出来るか
5.温熱環境(断熱、気密による冷暖房負荷の少なさ)
  断熱材の仕様、建具等の気密性能による等級
6.空気環境(内装材のホルムアルデヒド放散量の少なさ、換気方法)
  内装材に使用する木質形建材のホルムアルデヒドの放出量に応じた等級
7.光、視環境(開口面積の大きさ等)
  住宅の居室における床面積に対する開口面積の割合
8.音環境(界床、界壁の遮音対策の程度)・・・強制ではない
  上下階、隣戸間の躯体の厚さによる遮音等級
9.高齢者への配慮(バリアフリーに対する配慮)
  部屋の配置、段差、手摺、部屋の大きさ、通路の幅、ELV等による等級

*住宅性能表示そのものは強制ではない。必用に応じて取得すれば良いが、建築コストに 反映される。但し本来の目的である住宅の性能は確保され、問題になった時も処理機構 が調整をしてくれるので安心である。
 最近は住宅性能表示取得して、共同住宅を販売するディベロッパーが有ります。

ISO(国際標準化機構)
 ISO9000シリーズとは、ISOによって1987年に制定された品質管理 及び、品質保証の規格で、製品そのものでなく、組織の品質保証のしくみについて の要求事項を規定した国際規格のことです。他に14000シリーズが有りますが 環境についての規格です。
 ISOの大体の内容は下記のとおりです
 1.経営の理念を明確にする
 2.理念に従って品質の方針を決める
 3.方針実現のための品質マニュアルを作成する
 4.検査手順や是正手順、品質確認の方法を定める
 5.これらの事を全て文章化して記録する
 ISOのシステムによって出来た製品は(建築物)生産の過程での品質規準や 検査結果など全ての情報が記録される事になり、消費者の側からは一定の品質が 保たれた物であると考える事が出来ます。但し、品質は必ずしも高品質を約束 している物ではない事を頭に入れておいて下さい。
 ISOのシステムは絶えず見直し、外部審査を継続的に行なう事を条件として 国際認証機関の認証を受ける事が出来ます。一度合格すると永久免許になる訳では なく、継続的に更新していくシステムです。又、規格そのものも6年毎に見直しが あり、2000年版が最新のもので94年版に比べて大きく変わりました。主として 製造業を対象とした規格であったものを、金融や医療などサービス業までを視野に 入れた規格に変わりました。もう一つの特徴としては、顧客満足の測定が盛り込まれ ました。つまり不適合が無いというだけではなく、顧客が満足しているかどうかを 測定しなければならなくなったのです。