高置水槽方式をポンプによる直圧方式に:2000年9月号掲載

S住宅
(埼玉県・草加市)

S住宅管理組合(草加市旭町、昭和45年旧住宅都市整備公団分譲、RC造5階17棟、総戸数380戸)は、平成11年6月1日から8月末の工期で給水管の更新更生工事を実施しました。

工事実施に至った経緯

平成6年に第2回の大規模修繕工事を行いました。その時に制作した長期修繕計画書に基づき、給水管の劣化状況調査を平成10年2月に行いました。調査報告の内容は、

  1. 給水管内には、錆こぶが発生しており、こぶの大きさは今後急速に大きく成長していく
  2. 錆こぶは水流の休息な変化で剥離しやすく、水栓器具廻りでは、錆詰まりや錆砂流出の原因となる

以上の調査報告を受け管理組合として、給水管の更新更生工事の実施を決断しました。

工事業者の選定

平成10年の4月より理事長・副理事長および営繕担当理事を中心として、日住協のアドバイスを受けながら、業者および工事工法の選定に着手しました。

まず、十数社の中から書類選考の後、工事実績の豊富な3社に絞り込みました。見積提出にあたっては、「給水管劣化状況調査」を基に、工事工法、工事期間なども併せて提案させました。それぞれ数度のヒアリングなども行った結果、日本リフォーム株式会社に内定しました。

そして、6月の通常総会で、工事業者・工事工法・工事金額が承認されました。管理組合規約では、修繕積立金は管理組合が管理すべき共用部分について支払われるべきであると決められています。しかし、今回の給水管の工事では、共用部分と専有部分とが連結し、一体となっているため、特例として修繕積立金より支払う事としましtあ。

工事工法の選定・工事範囲

今回の更生工事の工法については、工事実績の多いパイプライニング工法を採用する事としました。さらに、パイプライニング工法の中でも乾式工法・湿式工法とに分けられますが、給水管内を両方向からライニングする「NRK工法」を採用しました。

工事の範囲としては、共用部分については、全てを新しい管に交換し、専有部分の管については更生工事としました。

○更新工事範囲

  • 埋設給水管
  • 給水堅管
  • 給水引込管
  • 床下引込管
  • メーター廻り給水管

○更生工事範囲

  • 専有部分給水管

また、今回の工事では当団地の給水方式を「高置水槽方式」からポンプによる「直圧方式」に切り替える事としました。その理由としては、

  1. 1階と5階では水の出る勢いが違う(5階は弱い)
  2. 地震の際に倒壊の危険がある
  3. 水槽内の清掃など維持費がかかる
  4. 景観上、見た目が悪く、資産価値が下がる

居住者への協力要請および説明会の実施

専有部分の更生については、施工業者が家庭内に少なくとも3日間入る事になります。さらに工事期間中は仮設の水栓が、1本しか引かれないために、居住者に対しては、十分な事前説明が必要となりました。

流し台交換等のオプション工事も実施

よって、管理組合としては居住者全員が、工事内容について理解してもらえるように、都合9回の説明会を実施しました。また、工事期間中も工事の進捗状況などを「団地ニュース」に載せたり、掲示板へのポスターなどで情報公開する事により、理解と関心も高まり大きなトラブルもなく、無事に工事を終了する事ができました。さらに、水栓器具などの新規交換のほか、流し台の交換、選択排水管工事、全面的なリフォームなどのオプション工事についても受け付けました。

工事費用について

今回の工事では、営繕担当理事の努力により、工事費用を当初算定していた金額を大幅に下回ることができました。しかし、修繕積立金だけでは賄いきれず、住宅金融公庫からの借入をすることにより、居住者からの臨時徴収金は免れました。

今後の課題

次なる課題は、屋上防水・鉄部の塗装などがあります。管理組合としては、日住協の勉強会へ参加し、専門家の意見を参考に適切な修繕計画を作成し、実施する事が必要だと考えています。

(集合住宅管理新聞「アメニティ」第216号2000年9月号掲載)