超高層マンションの大規模修繕工事:2001年5月号掲載
S団地管理組合法人は、平成12年9月から平成13年4月までの工期で大規模修繕工事を実施し、このほど竣工した。設計・監理は株式会社東京建物リサーチセンター、施工は建装工業株式会社が担当した。
大規模な修繕工事は、ともするとゼネコン指向のある中で、改修工事の専業会社がゼネコンを排して元請けとなった点が、今回工事の特徴の一つともなっている(なお、当工事の施工業者選考過程等の詳細は、日経アーキテクチャー4月2日号にて紹介された)。
超高層マンションの改修事例は比較的まだ少ないので、施工者である建装工業に、超高層住棟の施工事例をレポートしてもらった。
S団地の概要
- 所在地
- 東京都足立区
平成1年西洋環境開発分譲 - 総戸数
- 408戸(店舗6戸含)
30階建超高層1棟(223戸A棟)
14階建高層2棟(B棟130戸、C棟55戸) - 管理形態
- 部分委託(西洋コミュニティ)
駐車場 160台
団地管理組合法人。
ゴンドラによる作業のため安全と品質管理を最優先
ご下命いただいて施工側としてまず力を入れた点は、当マンションのベランダが連続していないため、ゴンドラでの横移動ができず縦方向のみの移動となりますので、ゴンドラのかけ方に工夫をしました。
また、足場がある場合は、施工後(検査後)に不具合箇所があればいくらでも補修できますが、ゴンドラの場合にはそれができませんので、施工精度を上げることに力を入れ、工期よりも安全管理と品質管理を最優先しました。
したがって工期につきましては、天候の具合もあり、管理組合側にその都度ご了解を得て進めましたが、結果的に全体で約15日遅れで竣工することができました。管理組合をはじめ居住者の方々のご協力の賜と感謝いたしております。品質管理につきましては毎日のチェックを励行しました。
住戸内の通風と採光を確保するため、養生ネットを上下に移動
当マンションは、隅田川の川端に位置しております関係で風が強く、風のため施工できない日もあり作業効率は落ちましたが、なによりも安全を優先しました。
作業員は、二人一組でゴンドラに搭乗して作業しますが、ゴンドラ操作にも習熟する必要がありますので、ゴンドラの会社(日本ビソー)で全員特訓を受けました。
14階建高層棟の養生ネットにつきましては、固定式の従来の方法では住戸内が暗く、通風にも問題がありましたので、養生ネットを毎日上下に可動できるようにして、作業時のみネットを張れるように工夫しました。
工程等の打合せ会議は、施主側(管理組合)、監理側、施工側の三者による定例会議を設定させていただき、その都度問題点を協議し、ご指示をいただきました。
当社といたしまして、これまで超高層建物の施工はゼネコンの協力会社として幾度か経験しておりましたが、元請けとしてご下命いただくのは初めてのことでもあり、スタッフ一同かなり緊張しました。作業員のマナーについても、特に気を遣いましたが、無事完工となり一同ホッとしているところであります。ご協力ありがとうございました。
(建装工業 東京第2事業部・工事部リーダー 手島直人)
超高層住棟の工事仕様
(PC・30階建・築後12年)
工事範囲並びに工事種目 | 既存仕様 | 主な改修仕様 | |
---|---|---|---|
架設 | ゴンドラ | 屋上に専用吊り機を設置して吊り下げ | |
養生ネット | 上下可動式(14階建のみ) | ||
大屋根 | 平場面 | シンダーコンクリート | ウレタン塗装複合防水冷工法(612平方m) (材料メーカー:タジマルーフィング) |
パラペット | タイル貼り | 破損部補修 | |
一般外壁 | 下地 | マスチックA+ アクリル系樹脂 |
微弾性+水性ウレタン |
タイル | 45mm×45mmのタイル面 | 破損部補修 | |
シーリング | タイル面、 ポリサルファイドPC、 ALC面、 ポリウレタン |
タイル面 変低シリコン 塗装面 ポリウレタン |
|
ベランダ上裏 | マスチックA+ アクリル樹脂 |
ターペン可溶型透湿性塗料 | |
その他工事 | ベランダ手摺 | アルミ | 清掃 |
防水 | タイル面 | 水和選固型塗膜防水、無機質系浸透塗布防水、ルーフバルコニータイル貼り替え | |
防水 | モルタル素地 | ウレタン塗膜防水 | |
住戸内 | 住戸内に入っていない(住戸内からの共用部、専用部の施工はしていない) |
<アメニティ新聞224号 2001年5月掲載>