川沿いで劣化した外壁をグレードアップ:2002年2月号掲載

Koji13_2
Mマンション高層棟
(都営新宿線「東大島」駅前)

建物概要

Mマンション高層棟は、新川と旧中川に挟まれた、都営新宿線東大島駅前の高層棟・14階建120戸の住宅である。

準備と着工

平成12年5月に大規模修繕部会を12名で設立し、管理会社による建物状況調査、日住協の建物1日診断を同年6月に依頼し、大規模修繕工事実施時期について検討を行った。

設計監理方式か、責任施工(設計・施工)方式とするか工事運営方式の検討では、専門家による修繕設計と工事監理が必要であるとの結論に達し、同年11月にコンサルタント(八生設計事務所)を選定した。

修繕設計のための建物調査、資料調査、アンケート調査を行い、平成13年3月に工事範囲、仕様についての基本計画を検討。平成13年6月には、修繕設計が完了し、直ちに施工業者の選定を行い、見積業者の中から5社を選んでヒアリングを実施。施工業者を内定((株)東急コミュニティー)した。同年7月には、臨時総会の承認(8月)の前に工事内容等説明会を行い、合意形成をはかった。

平成13年9月~平成14年2月を工期に、大規模修繕工事が着工された。

建物劣化等の特徴

屋根は、陸屋根(ルーフバルコニーを含む)と傾斜屋根の2種類で防水が施されている。陸屋根は、立上り部がアスファルト露出防水で、伸縮目地が適切に入っていない箇所の劣化が進行していた。傾斜屋根は、一部に風により剥離し欠損している箇所や補修貼りが見られた。鉄筋爆裂は、バルコニーや開放廊下の断面が細い化粧柱(マリオン柱)に多く見られた。

Koji13_3 化粧柱のカブリ不足による鉄筋爆裂

コンクリートの収縮によりひび割れが発生し、このひび割れから雨水が浸入して、開放廊下や大庇上裏に漏水が各所に見られた。開放廊下床面には、ウレタン塗膜防水が新築時より施されていたが、厚み不足のため、クラックに追従できず漏水していた。又、床面のウレタン塗膜防水面は、雨の日にはすべりやすく、大規模修繕工事の際に改善が必要な事項となっていた。

工事の特徴等

  1. 仮設工事としては、1階ピロティ部の駐車場を工事中も使用するため、駐車場出入口の東側に、全面鉄骨による構台を設置した。
    Koji13_1 1階ピロティ部。駐車道と構台
  2. 外壁等の躯体改修・止水工事では、東京都の瑕疵工事として、鉄筋爆裂0.3mm以上のひび割れ補修実施。鉄筋爆裂の多い化粧柱(マリオン柱)は、鉄筋のカブリ不足の改善の為、全面ポリマーセメントモルタル(厚3~5mm)塗を行った。
  3. 鉄部塗装の仕様では、直接風雨にさらされる鉄部には、下塗り・中塗に浸透性厚膜エポキシ樹脂塗料、上塗りにポリウレタン樹脂塗料を採用した。
  4. 外壁塗装として、一般外壁は、微弾性下地調整材の上、シリコーンアクリル樹脂系上塗り材とした。
  5. バルコニー床、開放廊下庇上端、傾斜屋根・棟笠木等には、ウレタン塗膜防水の上、常温乾燥型フッ素樹脂塗料塗を行った。
  6. 鉄部・金物等補修・雑工事も行った。
  7. 屋根防水は、立上り部が露出アスファルト防水となっている陸屋根は、立上り部廻り押えコンクリート撤去後、立上り廻りに防水材の上の断熱材が入っていない箇所に既存断熱材と同材にて断熱材を施した。
     傾斜屋根の北側には、藻・苔類が付着しているので、デッキブラシにより撤去後、防藻材を塗布し、高圧水洗を行った。

工事打合会

工事打合会は、管理組合・設計事務所・施工業者で、隔週で行われ、工事の進捗状況、建物劣化状況による修繕方法の再検討、承認等を行い、工事を進めている。

工事は、2週間程度の遅れで、3月中旬竣工予定です。

(八生設計事務所・一級建築士・近藤武志)

<アメニティ新聞233号 2002年2月掲載>