管理組合と連携して進められた大規模修繕工事:2005年7月号掲載
設計・監理 有限会社 鈴木哲夫設計事務所
新築後10年を経過したDマンションでは、大規模修繕工事を推進するに当って成熟した管理組合活動が行われている。環境改善や改良工事などは、大規模修繕に照準を合わせて工事の実施を検討する場合が一般的であろうが、当該マンションの場合はバリアフリー・駐輪場増設・セキュリティなど数々に手を加え、中間での維持保全も定期的に実施して来た。管理組合は、より充実した将来への保全を確実にするため、第1回目の大規模修繕工事に対してトータル的なコンサルタントの関与を検討し、複数の設計事務所からプロポーザルによって弊社が選定された。
工事推進の障害
都市型のマンションの場合は、敷地に限りがあり、建物の周囲に工事障害となる駐車場や仮設用地の確保に苦労する。御多分に漏れずこのマンションも同様で、足場の架設や現場事務所の設置などにより、場外に駐車車両の一部を移動する必要があった。また、駐車機械の鉄部塗装の関係もあって、一時的に場外移動を考慮する必要があった。
建物診断の時点で、この点が課題であることを指摘し、車両移動場所の確保を工事会社任せにせず管理組合で事前に候補地を確定しておいた。この点は、工事会社の余分なエネルギーの投入を避けることができ、工程計画がつくり易く経費の合理化や移動トラブルもなかった。工事の円滑な推進ばかりでなく、管理組合で用意できることをやっておくと合理的な費用削減効果を期待できる。
バルコニーの私物整理
各バルコニーには不要物の集積が見られ、実際の工事が始まってから居住者に整理を促しても足並みが揃わないことが多いため、管理組合の対応として廃棄物処理を一括して行うことを提案した。実際には足場架設の前後した時期に、管理組合の費用で処理を依頼し、一定期間バッケットを用意した。満杯になったところで廃棄し、結果として粗大ゴミを含め50トンの廃棄物が出された。日常性の中では、なかなか廃棄の機会がつくれないため、ついつい貯め込んでしまうことから、大規模修繕を機会に住戸内の不要物廃棄を管理組合が音頭を取って位置づけたことは住人からも好評であった。
改修の重点目標
管理組合にとって始めて経験することになった今回の工事は、躯体を徹底して直すことに重点が置かれ、加えてエントランスドアを自動ドアに改修するなど環境改善工事項目は多岐に亘ったものとなっている。
また、これまで新築時の瑕疵とされる継続した漏水問題も併せて直すことになった。安易な補修で終始した結果であるが、原因を正確に追求してゆくと屋上に設置した電話無線基地局の基礎に意外な納まりがあることを突き止め、その改善により問題の解決に至った。
無線基地局基礎のジョイント部からの漏水があり、隙間が大きいためにペットボトルで注入工法を考案実施した
<アメニティ新聞274号 2005年7月掲載>