耐候性、漏水防止、メンテナンス機能の向上に配慮した3回目の大規模修繕工事:2007年2月号掲載
Tマンション (東京・品川区)
【3回目の大規模修繕工事にあたって】
Tマンションは、京浜急行「青物横丁駅」から徒歩5分、02年12月に開業した、りんかい線「品川シーサイド駅」からも徒歩5分圏内の元なぎさ通り沿いに建設された築32年を迎える総戸数84戸、1LDK中心の分譲マンションである。
今回の大規模修繕工事では、単に美観の向上だけではなく、同マンションの耐候性・漏水防止・メンテナンス機能の向上などにも配慮し、建物自体を長持ちさせることを目的とした材料選定や改修方法でおこなわれた。主な改修箇所や状況は以下の通りである。
今回の外壁を中心とする大規模修繕工事は、築32年目であるが、2回目の工事である。竣工後10年目に第1回目の工事を実施した後、22年間、部分的な補修しか行われてこなかった。
●防水改修工事(屋上屋根・バルコニー)
躯体を保護する意味で防水改修工事は重要な役割を果たす。今回の工事では、既存防水に新規防水材料を被せておこなう「被せ工法」を採用した。屋上屋根・バルコニー共に、ウレタン防水を使用することによって10年間の漏水保証を付けた。
●外壁下地補修工事
大規模修繕工事の最も重要な目的は、外壁塗装下地(躯体)の劣化損傷を機能回復させることにあり、今回の工事では下地補修に重点をおいて作業をおこなった。仕上げの美観性向上と併せて躯体の機能性向上もおこなえる塗料を検討した結果フッ素塗料を採用した。
●外部廻り鉄部塗装工事
外壁塗装と共に外部廻り鉄部の腐食などを防ぐために、鉄部塗装工事をおこなった。その他にゴミ置場・駐輪場なども併せて塗装工事をおこない、コスト削減をした。
●階段外部廻り鉄部塗装工事と取替え工事
同マンションの外階段は2箇所に設置されており、特に鉄部の腐食が著しい「北側階段」は取替える改修工事をおこない、「南側階段」は踊り場のたわみ直しをおこなった。塗装は鉄部の腐食を抑えるため階段部分は「亜鉛メッキ」とし、柱・梁部分は5年間保証の「重防食塗装」を採用した。
●その他
今回の工事では外壁や屋根などの改修工事と共に、マンションの機能改善・向上の工事と、仮設足場が必要な改修項目を併せて工事範囲として実施した。エントランス廻りでは、スロープの拡幅および滑り止めタイルの交換。開放廊下手摺交換、廊下照明器具交換、各戸室名板交換なども一緒におこなわれた。住民にとっても、工事回数が減ることは大歓迎である。
【おわりに】
今回、3回目の大規模修繕工事をおこなったが、1・2回目の工事資料がほとんど残っていない状況からのスタートであった。設計監理を担当したベニーエステートサービスは、8年前に日常の管理業務を委託された。この間にマンション全体の劣化に関する情報を収集し、今回の設計監理に活かしていた。同社は大規模修繕工事後のメリット・デメリットを管理組合と事前に話し合い、細かい工事を今回の工事時期に合せることでスケールメリットを出すことなども提案した。また、施工業者の募集をおこない、応募があった16社の中から管理組合が最終的に施工業者をTOHOに決定するまでの間サポートもおこない、施工業者とお互いに協力しながら今回の工事を完了させた。さらに同社では「今後も工事後の経過観察を含めて、マンションの維持管理や長期修繕計画をサポートしていきたい」としている。
<アメニティ新聞293号 2007年2月掲載記事>