施設のグレードアップとメンテ費用の低減も図った3回目の大規模修繕工事:2007年7月号掲載

 H住宅は千葉県千葉市郊外に位置する、旧公団花見川団地(総戸数7246戸)の中の分譲街区(6・7街区)として、昭和43年(1968年)入居の40棟・1530戸からなる集合住宅である。今回の第3回目の大規模修繕工事着工時(2006年)は入居後38年目となる。

H住宅(千葉県・千葉市)

 管理組合では、今回の大規模修繕工事の計画に先立ち、2004年に長期修繕計画の見直しをした。その際に建替年限を最長築後80年迄延長することを見据えて検討した。

 建替年限を延長するに当たり、事前調査を実施して既存の躯体強度の現状確認と以後の躯体強度保持の為の計画修繕仕様を検討した。

 事前調査の結果、躯体コンクリートの圧縮強度は良好な状態を保持しており、コンクリートの中性化の防護と、ひび割れ等からの浸水等による鉄筋の腐食を防止すれば、躯体としては建替年限の延長に充分対応出来るものと判断した。

 また、既存塗膜の付着強度はかなり低下しており、既存塗膜の破壊面は新築時のリシン層とモルタルの界面と確認した。よって、新築時の塗装から4回目の塗装となる今回は、外壁の既存塗膜は全面除去する仕様とした。

外壁洗浄

 建替え時期の延長により中間期に当る築後38年目となる今回の大規模修繕工事において、住環境と安全面の向上と今後の維持管理費用の低減の面から、既存施設のアルミ化・ステンレス化など施設のグレードアップを前提とした改修仕様とした。

 工事期間は2006年6月~2007年7月(14ヶ月間)を予定、施工会社は工事規模から屋上防水施工会社を含めた3社共同企業体とした。

 主な改修内容は下記の通りである。

 管理組合では現在まで、2000年に階段補助手摺取付、2001年に電気容量増量(60A対応)と幹線更新、2005年に光ファイバーとケーブルテレビ導入等、住環境の改善に取り組んで来て今回の第3回目の大規模修繕工事に至っている。

 今後は、2012年に大屋根防水全面改修・階段室床改修・外灯改修、2013年に給水管更新、その他外構整備等を計画している。管理組合では、今後とも建物の維持管理の充実とバリアフリーを含めた更なる住環境の改善に取り組む予定である。

北面手摺施工後

〈主な改修内容〉

【屋上防水改修】
・大庇は2012年の大屋根改修に合せた仕様にて全面改修し、大屋根は部分補修とトップコート塗布
【外壁改修】
・超音波による既存塗膜の全面除去及び露出躯体面の全面補修
・高耐候低汚染水性シリコン樹脂塗料仕上
【ベランダ改修】
・床ウレタン防水増塗り、平面は長尺樹脂シート貼
・鋼製手摺をアルミ製手摺(300kgタイプ)に更新
・鋼製物干金物をアルミ製伸縮タイプに更新
・隔板枠のアルミ枠更新及びボードはアスベストを含まないケイカル板に更新
・手摺壁笠木天面ウレタン防水材塗布による躯体保護及び表面平滑化
【窓等手摺改修】
・鋼製窓手摺をアルミ製手摺に更新
・一部棟階段鋼製手摺をステンレス製手摺に更新及び補助手摺取付
【玄関扉改修】
・カバー工法による更新、扉仕様のグレードアップ・扉性能向上及び防犯性能強化

玄関扉施工前

玄関扉施工後

【集合ポスト更新】
全戸分(155階段)のポストをダイヤル錠付A4対応大型タイプに更新
【その他金物等更新】
1.屋上ハッチ蓋を鋼製からステンレス製特注品に更新
2.一部棟の屋上エキスパンション金物をレジノ鋼板製からステンレス鋼板製に更新
3.階段掲示板をステンレス枠900×600サイズに更新
4.室名札をステンレス製に更新
5.床下点検口をステンレス製鋼板にて改修
6.階段室電話埋込ボックス、妻壁電話埋込ボックス蓋を鋼製からステンレス製に更新
7.一部棟の階段室PS木扉の更新
8.階段室メーターボックス鉄扉のカバー工法による更新
9.全竪樋(樹脂製)の更新

室名札施工前

室名札施工後

【設計・監理】
一級建築士事務所
秋設計
【施工】
(代表幹事会社)
建装工業株式会社
渡辺物産株式会社
南海工業株式会社
<アメニティ新聞298号 2007年7月掲載記事>