市街地型マンションのはじめての大規模修繕工事:2008年2月号掲載

Rマンション(さいたま市)

 JR浦和駅から10分程の住宅街に建つRマンションは、築11年の昨年9月に大規模修繕工事を着工した。地上13階建ての1階は風除室・エントランスホール・管理事務室・駐車場・電気室からなる。全48戸で2階から住戸となる。1フロアー4住戸ずつの比較的小規模ではあるが、13階建と高さがあるために周囲に対して良い意味での存在感がある。最上部は緑青色の勾配屋根、アプローチ庇もおそろいの緑青色の円型になっている。南側バルコニーの両妻側住戸には六角形の窓が付き、緑青色の屋根・庇と共にこのマンションのポイントとなっている。

 平成18年11月から調査診断に着手、診断結果は翌3月の定期総会時に説明・報告され、報告書の概要版も全戸に配布。総会承認により次の修繕設計・工事施工者選定へと進む事となった。施工者はアメニティなどの専門紙の公募に応募した業者の中から、3次の選考を経て(株)シミズ・ビルライフケアに決定した。最終選考では3社をヒアリングして、各社プレゼンテーションの内容を比較検討、特に現場担当予定者の能力や人柄等を吟味した。8月下旬の臨時総会で承認を受け、9月居住者へ工事説明会を開催し、工事着工。理事会・委員会の積極的な主導によるオープンな運営が組合員の信頼を得、スムーズに進行した。着工後5ヵ月の本年1月末、事故や不都合も無く予定通り完了した。

 工事の内容は外壁等の躯体・タイル補修、塗装塗替、バルコニー・外廊下・外階段の床仕上・防水、外回りシーリング取替、屋根・鉄部塗装等の工事。躯体の補修では、コンクリート欠損部はポリマーセメントモルタルによる成型補修、ひび割れは注入・Uカットシーリング・目止め補修を行った。全体の補修数量はほぼ当初の予定通り。

 外壁タイルは茶系の50三丁掛磁器質タイルで、濃・中・淡の三色が使われていた。ヒビ割れ等の貼替え用タイルを既存に合わせて特注したが、思い通りに焼上がるまで何度も見本焼きを繰り返し、工程的にも苦労した。貼替えた部分の色彩が他と違和感が出る事を恐れていたが、ほとんどわからず安堵した。他所でも毎回タイル貼りでは苦労する。

 最上部の大きな勾配屋根の表面に葺かれたシングル葺きの棟部等は増貼りをし、全体に保護塗装を施している。各戸のバルコニー床はコンクリート金鏝押えであったが、平場を長尺塩ビシート貼り、排水溝には露出ウレタン塗膜防水を施した。従来、長尺塩ビシートは塗膜防水等と比較して美装性に優れているが滑り止めの表面凹凸模様により掃除がし難いとの苦情が多かったが、今回は殆ど凹凸は無いが滑り止め効果の高い新製品を使用し好評であった。

勾配屋根保護塗装工事中

外廊下床長尺シート貼

 外廊下床は当初既存の長尺塩ビシートの不良部分を貼り替え等の補修で考えていたが、端部シーリングの欠如による傷みもあり、補修範囲が広くなるため、全面的に貼り替えた。排水溝等の周囲は露出ウレタン塗膜防水を施している。外階段の床はモルタル仕上げとなっていたがヒビ割れ等の劣化が著しく美観的にも問題があった。床下地を補修後、踏面・蹴込が一体となった階段用床シート貼りとし、巾木・排水溝は露出ウレタン塗膜防水としている。

 今回の工事において外壁関係以外では、バルコニー・外廊下・外階段の床(防水)の改修に力を入れた。特に床排水勾配の不良による水溜りが出来るのを解消する様、何度も散水テストを繰り返し行った。このほか第1回目の大規模修繕として一般的なシーリングの打替えや鉄部等の塗装塗替えなどを行っている。

 当マンションは敷地周囲に余裕が無く、さらに機械式駐車場・ゴミ置場・自転車置場などがあり、足場や現場小屋等を設置できる仮設用地が非常に少ない。この事は市街地における中・小規模マンションに共通する悩みであるが、駐車場の車輌の一部は外部に確保した仮駐車場に移動してもらうと共に、現場事務所はエントランスホールの一部を仕切って使う事として対応した。

 無事工事が終了したが、いずれも居住者の理解と協力があって実現した。((有)柴田建築設計事務所)

<アメニティ新聞305号 2008年2月掲載記事>