陸屋根・開放廊下型民間マンション大規模修繕工事 機械式駐車場を自走式に別途改修することも検討(関連記事2010年8月号):2009年3月号掲載

1、建物概要

 Rマンションは、京成線及びJR線津田沼駅から徒歩数分に立地している交通の利便性に優れた民間分譲の住宅である。
建物は経年12年目で、8階建(開放廊下型・陸屋根)住棟は現場打ちコンクリート造78戸のL字型に配置されている建物である。

2、管理組合の取り組み

 管理組合は、地元の建築士事務所で構成されているNPOに、当初長期修繕計画の見直し作成を依頼したが、NPO内部の連携が出来ないことを理由に辞退されてしまった。このため、再度コンサルタントを選定し、マンション・ユニオン保全設計協同組合に依頼した。

 長期修繕計画に先立ち、建物劣化調査(平成18年6~8月)を行った結果、玄関扉下枠・メーターボックス扉等の鉄部の劣化が進行し、放置すると腐食し穴明きが懸念される状況のため、鉄部補修工事を実施し、長期修繕計画を作成(平成18年10月~平成19年1月)した。管理組合では既に修繕積立金の値上げを段階的に行う計画があり、この修繕積立金値上げ計画と今回作成した長期修繕計画で、今後の建物・設備の維持・保全を行うこととした。

 尚、機械式駐車場(横移動式)については、メンテナンスコストの削減のため、自走式駐車場への変更を検討することとした。

 大規模修繕工事は、先に行った建物劣化診断から、平成20年秋に着工することとし、平成19年7月から修繕設計をスタートし、基本計画・修繕設計・工事予算書・工事項目検討書を作成し、11月に完成、12月には大規模修繕工事の合意形成のため大規模修繕工事の概要(建物劣化状況と修繕内容等)の説明会を行った。施工会社選定は11~12月に実施した。平成20年3月には総会でのスムーズな承認を得るため、工事内容等について、総会前居住者説明会を実施し、定時総会で大規模修繕工事実施の決議を行った。

3、大規模修繕工事の特長等

(1)屋根及びルーフバルコニー防水は、平場がアスファルト防水押えコンクリート仕上のため、今回は部分補修と立上部の露出アスファルト防水の保護塗装、防水層端末押え金物廻りシーリング打替を行った。全面改修は、長期修繕計画では築23年目の2020年(平成32年)とした。

(2)開放廊下・バルコニー床は、塩ビシート貼されていたが、シート端部や継ぎ目部の浮き・はがれ等の劣化が進行していたので、排水溝・立上部はウレタン塗膜防水、床面は塩ビシート貼替を行い、防水性能の向上を図った。

(3)コンクリート製屋外階段は、床面モルタルのひび割れ、ノンスリップ金物のはがれ、取付ビスの錆が見られることから、防滑性塩ビシート貼り、排水溝はウレタン塗膜防水を施した。

(4)外壁塗装は、バルコニー等内壁が微弾性下地調整材(1.2~1.6kg/m2)+水性低汚染型アクリルシリコン樹脂塗料(0.3~0.36kg/m2)、手摺壁天端は雨筋状汚れ防止を図るために微弾性下地調整材によるフラット仕上+トップコート塗とし、上裏は複層塗材により中性化抑止を図った。

(5)外壁及び手摺壁外側のタイル面は、タイル専用洗浄材によるクリーニングを行い、タイルの浮き部はエポキシ樹脂注入、タイルのひび割れ部はタイル貼替+コンクリート躯体Uカットシールによる補修を行った。

(6)外壁窓廻り等目地シーリングは雨掛り部は全面打替、非雨掛り部は劣化部のみの部分打替とした。

(7)鉄部塗装は機械式駐車場に錆や塗膜の経年劣化が見られたが、駐車場改修計画を検討しているため、今回は塗装工事は見送ったが、その他共用部は再塗装を実施した。

(8)金物改修工事としては、バルコニーアルミ手摺(トップレール)が手摺壁天端にU字金物で取り付けられていたが、グラツキが多く見られたので、締め直しを行い、グラツキを補修した。

(9)建物廻り床のインターロッキング舗装部は沈下している箇所が見られたので、補修と共にエントランス入口床の段差をスロープ化した。

4、今後の課題

 大規模修繕工事に引き続き機械式駐車場を自走式立体駐車場に改修する検討を行っている。建ぺい率・容積率の法的規制についてはクリアー出来るが、改修コストと駐車台数を総合的に検討し、計画修繕費の低減となる改修を検討している。

(マンション・ユニオン保全設計協同組合 担当/(有)八生設計事務所)

<アメニティ新聞318号 2009年3月掲載記事>