既存マンションでのエレベータ設置事例 5階建て外廊下タイプの20戸棟に新設:2009年9月号掲載

■ 住民の高齢化に対処して管理組合が立ち上がる

 Gハイツ(横浜市戸塚区汲沢町・小林 浩理事長・自主管理)は、昭和48・49年に横浜市住宅供給公社が分譲した5棟391戸の団地で、5棟の内3棟が7階建て、1棟が9階建て、残り1棟が5階建て(20戸)で当初からエレベータがなかった。

 築後30数年を経過し、住民の高齢化とともに当該棟の居住者からエレベータの設置要望があり、この程、4人乗りエレベータ1基を棟北側の外廊下西端の空き地を利用して新設した。

 エレベータの設置にあたって管理組合では、(1)車いすが可能なこと(2)各階に停止すること(3)地震対応型(地震時最寄り階で停止、1分間開扉、その後自動復帰等)の3つの条件を満たすことを前提に、エレベータ会社3社の中から横浜エレベータ(株)社製を選定。総工費約2300万円は全額組合費用で負担した。付帯工事として防犯カメラも取り付けた。

 設置工事に際しては、当該棟北側の進入路は階段があるためトレーラーが入らないので、エレベータ塔屋等の大型資材は南側の道路から当該棟の頭上を越えて(写真)運び込んだ。資材は総重量12トンもあり、かなりの難工事となった。また、エレベータ塔屋の設置が伴うため、市の条例や消防法など関連法規をクリアするのも難題だった。

エレベータ搭屋の搬入

■ 難航した全棟の合意形成

 「当該棟は当初からエレベータがないのを承知で入居したのではないか」「今更、組合の費用で設置するのは反対」「当該棟の各戸が少しは費用を出すべきだ」など、反対論議が多い中で、管理組合として合意形成を図るための手続きを開始した。

 平成18年5月総会(第34回通常総会)で、当該棟にエレベータを設置する件を議案として提案したが、出席者(委任状含)297人のうち賛成が28人で否決となった。

 その後、平成20年5月総会で再提案したが、出席者141人の内賛成70人、条件付賛成42人であったが可決に至らず、継続審議とすることになった。

 当該棟から嘆願書が提出されていたため、新年度になり、理事会では「エレベータ設置委員会」を理事会内に設立して、前2回の総会経緯を白紙にしてゼロからスタートすることにした。横浜市マンションアドバイザーからの助言を受けて、まず、全戸の入居以来のエレベータに関する諸経費を算出・比較してみることにした。

 これによると、入居以来現在までのエレベータ補修費用が総額5200万円、戸当たり約13万円(修繕積立金から支出)、保守管理料が戸当たり約46万円(管理費から支出)で、各戸が総計約59万円を支払っていることが分かった。同団地の管理費(現行戸当たり月額7500円)と修繕積立金(8500円)は全戸同額であるから、エレベータのない当該棟もエレベータのある他棟のために同額を支出していたことが数字上判明した。

 理事会では、このデータなどを基に階段回覧等広報活動も活発に行い、平成20年12月に臨時総会を開催してエレベータ設置を再提案した。その結果、299人(総戸数の76・5%)の賛成を得て、今回工事となった。

「発議から5年、幸いにも、住民全体の高齢化もあり他人の大変さが分かる様になり、合意を得やすくなった事と情報を広報する事で管理組合の活動が理解され他の活動に好影響を得た事が嬉しい」と小林理事長が語っていた。

外廊下西端に設置された塔屋

<アメニティ新聞324号 2009年9月掲載記事>