高経年マンションの排水管改修工事 スラブ下配管をスラブ上に:2011年1月号掲載
Hマンション(東京・杉並区)
東京・杉並の「Hマンション管理組合」は、国土交通省がマンション管理組合等を対象に支援を行う「マンション等安心居住推進事業」の平成21年度のモデル事業に採択され、建物の全戸調査を実施。昨年給排水管設備改修工事を終了させた。
◆建物概要
Hマンションは東京メトロ丸ノ内線「方南町駅」から徒歩3分に立地。昭和47年竣工、SRC造12階建、地下1階~3階店舗、4階~12階まで住戸、総戸数45戸。今年築39年目を迎える。
◆管理組合の取り組み
同住宅はこれまで、2回の大規模修繕工事を行っていたが、建物の老朽化は着実に進んでいた。特に懸案事項となっていた老朽化の激しかった排水管の修繕を平成21年に検討。これまでの経験や公平性を考え設計・監理を(有)マンションライフパートナーズ(新宿区・柳下雅孝代表)に依頼。同社より「マンション等安心居住推進事業」を紹介され同事業の応募に至った。
◆モデル事業で全戸調査
同事業の採択に伴い、現状調査を目的とした全戸訪問調査を実施。事前説明を十分行い全居住者協力のもと各戸が抱える様々な不具合の現状が明らかになった。調査後、排水設備以外に浴室周り、洗濯機置場、換気、給湯等の問題も判明。これを受け管理組合は排水管の修繕とあわせ浴室の修繕を検討。施工会社の選定は13社の応募の中から最終的に京浜管鉄工業(株)を選定。平成22年4月より工事着手、同年11月無事竣工した。
◆工事の特長等
今回の工事の大きな特徴は、各配管がスラブを貫通して階下住戸の天井裏を通る「スラブ下」配管だったものを住戸床下の「スラブ上」に変更する工事を施したこと。
配管が階下の天井裏に集中するこれまでのルートでは、漏水が起きるとその影響は主に階下住戸に及んでいた。特に浴室部分は専有部、配管自体は共用部という問題もあり、抜本的解決はこれまで見つかっていなかった。この問題を全戸で配管をスラブ上に変更し、スラブを貫通する排水トラップのある浴室は新たにユニットバスへ変更する案がコンサルタントから提案された。
具体的には、新たに1本化した排水立て管にスラブ上に変更した排水管を接続。従来のスラブ下の排水管は全て撤去する。それに伴い浴室をユニットバスにリフォームし新たな排水ルートに接続する必要があるが、この費用に関しては各居住者負担となる。今回の工事では3分の2にあたる30戸が浴室リフォームを実施。リフォームを見送った住戸は浴室排水に依然、問題が残るが、その対策として実施されたのが「段階的に排水管のスラブ上化を図る手法」。
浴室リフォームを行わなかった住戸の浴室排水はスラブ下から暫定的に立て管へ接続し、将来リフォームを実施する場合に備え立て管に「将来排水接続口」が設けられた。
工事期間中各住戸は1~4日間の排水制限と浴室リフォームに6日を要し、その他に洗濯機防水パン、洗濯機用水栓の設置、床上排水型便器交換などが行われ、工事後の住戸は今後の水回りの位置変更やリフォーム設計に自由度が高まった。
(設計・監理/有限会社マンションライフパートナーズ 施工/京浜管鉄工業株式会社
<アメニティ新聞340号 2011年1月掲載記事>